1939年 丁黙邨らとの会談3
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2012/09/01 15:39 投稿番号: [1868 / 2250]
晴気慶胤著
『上海テロ工作76号』
毎日新聞社
49〜51p
《「これはたいへんなことですね。四面まるで敵ではありませんか。
いったい、どうすればこの敵と戦って勝てるのでしょうか」
私の驚きに李士群は微笑して答えなかったが、丁黙邨があとをすぐ引き取っていった。
「私たちはまず市党部と藍衣社をやっつけます。
この二つの始末さえできたら、其の他は自然に霧消して、上海の形勢は一変します。
市党部の委員には私の旧部下が少なくありません。
内部は派閥の争いがはげしく綱紀紊乱
(びんらん)
して統一を欠いています。
これらの弱点を巧みにつけば、案外簡単に党組織を、
そのままそっくり頂戴することができるかも知れません。
何といっても藍衣社は一番の強敵ですが、
その情報員が生活に困って動揺しているのが何よりの弱点です。
藍衣社員といえどもすべてが志操堅固とはいえません。
私たちはわが方に獲得した情報員からその連絡網をたどって、
組織のなるべく上位にいる者に近づいてゆき、これを説得して薬寵中のものにします。
そしてそれらのものを手先にして、彼らが支配していた組織をこちらのものとし、
こうして藍衣社の組織をなし崩しにしてしまいます」
敵の組織をそのまま横取りする。
これが丁黙邨らが計画した特務工作の基本方針だった。
こんな奇想天外のうまい策略はあるまい。
その案が実行できるならば、執拗な上海のテロも根絶できるだろう。
だが、果たしてそんなことができるであろうか。
彼らはいかにも自信ありげに大言を吐くが、
いうべくして果たして行われるだろうか。私はまたしても大きな疑問に襲われた。
そうした私の胸中をいち早く察した丁黙邨は、またもや鞄から分厚な書類を取り出した。
それには
「上海特工計画書」
と銘打ってあった。
彼はその書類を手にしたまま、語りはじめた。
「私たちはこの工作を本年初頭から独力で始め、
まず第一着手として情報網を組織しましたが、
あとの資金がつづかなくなってゆきづまりました。
李君の会社が日華合弁の船会社に強制的に合併されたので、
あてにした収入を失ったからです。
そこで日本から援助を受けて工作をつづけたいと思い、
特務機関や海軍、総領事館などと相談しましたが、
国民党の更生運動だという一言だけで、どこへ行っても相手にされませんでした。》
つづく
これは メッセージ 1866 (kir**gotowa**me さん)への返信です.
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