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長沙の引揚げ1 唐炳初の申し出

投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2011/01/21 18:49 投稿番号: [717 / 2250]
戦史叢書 『中国方面海軍作戦〈1〉』
289〜290p

《 七月二十日午前、勢多艦長吉見信一中佐は、湖南省政府顧問 唐炳初から
何鍵 (十九日廬山から帰着) の意向として、要旨左記の密談を受けた。

  一   最悪の場合、日本警備艦が在艦しなくとも、

   貴国居留民の生命財産は絶対に保証する。

  二   全面的開戦の場合は中国各省に警泊の日本軍艦に対して

   武装解除を要求することになろう。

唐顧問は、何鍵の真意は警備艦の撤退を望むにある旨付言した。
吉見   「勢多」   艦長は、次のとおり何鍵に伝言を依頼した。

   平和尊重の精神は全然御同感であるが、警備艦の進退については、
   本職の権限にあらざることを了とされたい。

   武装解除要求に次いで行われるべき貴方からの攻撃の場合は、
   それ以前に長沙市民全部を安全地域に避難させおかれんことを希望する。



同日午後、唐顧問は、長沙領事代理高井末彦を訪問し、何鍵の伝言なりとして、
不幸にして当地において日本警備艦と中国軍との間に交戦状態発生せば、

事実上貴国居留民の保護は保障し難いので了解されたい、と申し出た。

なお、高井領事代理の得た情報によれは、右の武装解除に関する何鍵の申し出は、
次のような国民政府令達に基づいたようであった。

  密報ニ依レバ   日本第十一戦隊ハ 開戦ノ場合   左ノ計画ニ依リ   中国後方撹乱ヲ

  企図シアルモノノ如シ。

  一   重慶警備艦ハ重慶、宜昌間、   宜昌警備艦ハ宜昌、城陵磯間、

    長沙警備艦ハ長沙、岳州間   ノ都邑 (とゆう : 都市や村) ヲ攻撃シツツ

    下航シ、三艦合同ノ上   漢口迄江岸各地ヲ砲撃ス。

  二   漢口下流ハ   第十一戦隊ノ主力ヲ以テ   南京迄ノ各都市ヲ攻撃ス。

  三   南京下流ハ   第三艦隊ヲ以テ攻撃セントス。

開戦トナラバ   惨事ヲ被ラザル以前ニ   各地ニ於テ速 (すみや) カニ

日本軍艦ノ武装解除ヲ   行フベシ。



二十一日、何鍵は唐顧問を通じ、高井領事代理に次のように伝言した。

昨日申入レノ件 (筆者注   全面的開戦の場合日本警備艦の武装解除を要求する件)   ハ
自分が   貴国海軍側トモ多年友好的間柄ニアル為   老婆心ヨリ御話シタル迄ナルニ

海軍側ニテハ余程之ヲ重大視シ   居ラルル模様ナル処、自分ノ申出ハ   好意的以外
何物モナキ   次第ニ付キ(筆者中略)尚   毎晩御送付ヲ煩ハシ居ル

「ラジオ・ニュース】(筆者注   NHK放送を聞き書きしたもの)ニテ

自分ハ今回ノ事変ノ真相ハ   十分早ク知り居ルニ付キ、南嶽ニ落着キタル上ハ
蒋介石アテ両国国交打開方策ニツキ   電報ニテ進言スル積リナリ。


*   中国側の   「貴国居留民の生命財産は絶対に保証する。」   という話が
   空疎な事は、これまでの数々の事例でわかっていることですが、

   日本人は基本的に善人根性のお人好しですから、これを本気にする人がでて来ます。

   また、 「国民政府令達」   の   「日本第11戦隊の開戦ノ場合ノ計画」   も
   事実と全く違い、殆ど妄想に近いものです。

   結局、彼らは徹頭徹尾、妄想の侵略日本軍を頭に描いて、
   平和を望んでいる本当の日本に戦争を仕掛けるわけです。


つづく
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