全面戦争回避を図る石原莞爾
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2011/01/16 15:52 投稿番号: [712 / 2250]
児島襄著 『日中戦争4』 文春文庫
60〜62p
《 参謀本部第一部長石原莞爾少将が、この赤煉瓦の一室で、軍令部次長
嶋田繁太郎中将と対座したのは、七月三十日午前十時すぎである。
「通州事件」
については、なにか異変があったらしいとはつたえられたが、
まだ詳細は報道されていない。
石原少将は、前日に作成した 「対支作戦計画ノ大綱」 案を持参して、
海軍側の同意をもとめたのである。
主旨は、こんごの中国での作戦行動の範囲を
「保定、独流鎮ノ線以北」
に限定し、
そのほか
「止ムヲ得ザル場合」
に青島、上海をふくませることにして、
早期に中国との戦いを終熄 (しゅうそく) させよう、とするものであった。
保定と独流鏡を結ぶ線を作戦限界ラインにする点については、
すでに支那駐屯軍司令官香月清司中将にその旨が指示されている。
北京、天津を制圧し、中国軍第二十九軍を永定河西方に駆逐した
支那駐屯軍は、次期作戦を用意する段階にはいった。
陸軍の作戦主務者である石原少将としては、あらためて対中国作戦にかんする
基本かつ既定方針を徹底させるべく、「大綱」
を策案したわけだが、
とくに海軍側に諒解をもとめたのにも、理由があった。
三日前、海軍省と軍令部の幹部が協議して、
「時局処理
及
準備ニ関スル
省部協議覚要旨」
を作成したが、その冒頭には、次のように明記されていたからである。
「事変不拡大、局地解決ノ方針ハ
依然
堅持スルモ、 今後ノ情勢ハ
対支全面作戦ニ導入
ノ機会大ナルヲ以テ、 海軍トシテハ、 対支全面作戦
ニ対スル
準備ヲ行フコトトス」
石原少将は、 このような意見は、 「作戦ノ本質」
を知らぬものだ、と、
嶋田中将に強調した。
陸軍の主敵はソ連である。 その対ソ戦備にはげまねばならぬときに、
「対支全面戦争」
にしばられてソ連の進出に遭遇したら、どうなるのか。
いや、陸軍には、 中国との戦争だけでも相手を
「屈服サセル成算」
がたたない。
日本の軍事力が不十分だからであり、現在、中国との戦いに動員できる兵力は
「四個師団」
までであり、 四個師団でできる作戦の限界が
「保定、独流鎮」
の線である。
石原少将は、 だから、 保定−独流鎮ラインに達するまでに中国側に痛打をくわえ、
和平にみちびくべきであり、 そのさいは、満州国承認だけをもとめ、
日本が中国にもつ既得権益はすべて中国側に返還すればよい、と述べた。
「コレガ日支親善、 貿易好転ノ 唯一ノ策デアル」
嶋田中将はうなずき、中将の報告をうけた海軍首脳部も
「大綱」
に
対する同意を表明した。
つづく
これは メッセージ 711 (kireigotowadame さん)への返信です.
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