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天津軍の強硬な姿勢を抑える中央

投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/10/03 15:32 投稿番号: [589 / 2250]
児島襄著『日中戦争4』文春文庫
14〜16p

《 支那駐屯軍司令部は、この日、
「七月十三日ニ於ケル支那駐屯軍情況判断」 を東京に打電した。

・・・
「情況判断」 は、中国側が永定河左岸に撤退する協定に違反し、
さらに撤退要求を拒否したときは、ただちに兵力を行使すべきだ、と主張する。

しかし、そのさいは 「一挙ニ第二十九軍ヲ撃滅」 すべきであり、そのための
「戦略的基礎配置」 は 「七月二十日前後」 に完了する予定だ、という。

そして、中国側にたいしては、十一日に北京で合意された条件は手ぬるいので、
将来の保障について七項目を要求し、承知しなければ、

冀察政務委員会の解散と第二十九軍撤退をもとめるべきだ、と、
「情況判断」 は強調した。


  七項目は、次のとおりである。

  ①共産党策動ノ徹底的弾圧

  ②排日要人ノ罷免

  ③排日的中央系各機関ノ撤去

  ④排日団体即チ藍衣社、CC団等ノ撤去

  ⑤排日言論及宣伝機関、学生民衆ノ排日取締

  ⑥学校、軍隊等ニ於ケル排日教育ノ取締

  ⑦「北京ノ警備ハ将来公安隊ヲ以テシ、城内ニ軍隊ヲ駐屯セシメズ」


北京で合意された条件にくらべれば、「排日要人ノ罷免」、学校、軍隊での
教育への要求、とくに北京からの軍隊撤退などの新条件は、格別に厳格である。

支那駐屯軍としては、中国側の姿勢を抜本的に〝修正〟(または軟化)
させるためには、これくらいの要求が必要だと判断したのであろう。

また、現に中国側の 「排日」 「侮日」 行為になやむ日本人居留民たちに
とっては、こんごの中国内での 「安全保障」 を確保する要求として、

賛意を表明し得るものであった、ともいえる。


だが、「北支事変」 の呼称があたえられたにせよ、本来は小規模な紛争である
盧溝橋事件の終熄 (しゅうそく) のための要求としては、過大であろう。

七項目は目標であり、平和交渉では実現できないのを承知で、
武力行使で成就するねらいとも、解釈できる……。

「情況判断」 を承知した参謀本部第二課は、午前十時、

「七月十三日 中央ノ執ルベキ処置ニ 関スル意見」 を具申した。

「排日停止保障ノタメ   支那軍ヲ北京城ヨリ   撤退セシムルガ如キ

(天津軍幕僚ノ意見) 過大ノ要求ハ、 此 (この) 際 一般方針ニ

反スルノミナラズ、求メテ   事件ヲ拡大スル   ニ等シキモノナリ。

飽迄   先ヅ   既定方針ヲ堅持シテ   進ム如ク、天津軍ヲ   指導スル   ヲ要ス

(速ニ処置ノコト)」



陸軍首脳部も、なんとなく 「七月二十日」 を期して攻勢に出ると
いわんばかりの支那駐屯軍の 「情況判断」 には、当惑した。

陸軍省、参謀本部の首脳会議がひらかれ、午後八時、「北支事変処理方針」 をきめた。
とりあえずは 「十一日午後八時調印ノ解決条件」 を 「是認」 して、その実行を見まもる。

内地部隊の動員もみあわせるが、中国側が協定の実行に誠意をみせない場合、
または中央軍を北上させて攻撃を企図するときは、「断乎タル決意」 をする。

ただし、武力行使については、支那駐屯軍は事前に東京の承認をうけねばならない
― という内容である。

この 「方針」 は、翌日、七月十四日、支那駐屯軍に打電された。


つづく


*   香月司令官の強硬な態度を知り、参謀本部は抑止する方向に動いた。
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