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盧溝橋事件38 赤藤少佐の資料収集

投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/08/05 18:31 投稿番号: [528 / 2250]
  竜王廟近くの戦闘中、赤藤少佐は、情報収集していた。


寺平忠輔著 『日本の悲劇   盧溝橋事件』 読売新聞社刊   137〜138p


《 憲兵分際長赤藤少佐は、北京より一緒に来た鈴木軍曹や加藤上等兵とともに、
竜王廟一帯の敵陣地の状態を視察するとともに、昨夜来の事件の本質、

その他一般の情報資料を探索していた。
塹壕の中には、まだ生々しい中国兵の死体が幾つもころがっている。

下士官らしいのが一人、頸動脈を射ち貫かれたらしく、首が半分ちぎれかかり、
上半身真っ赤に染まって斃 (たお) れていた。

まだ完全には死に切れないとみえて、時々、ピクリピクリと動いていた。

「おい、こいつのポケットを調べてみい。
下士官のようだから、なにか書類ぐらい持ってるかもわからないぞ」


上等兵はポケットや内隠しの中を探り始めた。
傷口にたかっていた蝿がワーッと一斉に舞い上って来る。

「手帳が出て来ました。なにか書いてあるようです。とても巧い字で書いてあります」

少佐は引ったくるようにしてそれを手にとると、一ページずつめくって行った。
冒頭には直系上官官氏名として


  第二十九軍    軍長   陸軍上将   宋   哲   元

  第三十七師    師長   陸軍中将   馮   治   安

  第百十旅     旅長   陸軍少将   何   基   レイ   (サンズイ + 豊)

  第二百十九団   団長   歩兵上校   吉   星   文

  第三営      営長   歩兵少校   金   振   中

  第十一連     連長   歩兵上尉   耿   錫   訓


と書いてある。これで事件の責任関係が一目瞭然だ。
少佐はひとりうなずくと、パラパラッとページを繰った。

そして一番最後のところに六月二十一日付の訓示を見出した。

それは団長吉星文から与えられたもので、内容は、
軍人精神発揚に関する注意事項が羅列されている。

とくに重要な部分には、文字の横に赤い圏点さえつけられていたが、
とりわけ赤藤少佐が目を光らせたのは、次の一項である。


「諸情報を綜合するに、日本軍は最近の機会において、演習の名目のもとに
宛平城を奪取する企図を抱いているようである。

この情勢はここ数日来、とくに緊迫したものが感ぜられる。
該地の警備に任ずる部隊は、昼夜間断なく至厳なる警戒を続行し、

防務の完璧に最善の努力を傾倒する事が肝要である」


こんな訓示が出たもんだから、にわかに堤防上の陣地を強化したり、夜間、
配備についたりしやがったんだな。

少佐は手帳を自分のポケットに突込んだ。》


つづく
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