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『丸一洋行』 店主惨殺事件

投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/05/28 18:27 投稿番号: [456 / 2250]
児島襄著 『日中戦争3』 文春文庫
225〜226p

《九月三日、またしても日本人殺害事件が発生した。
現場は、広東省雷州半島の西方の北海市。

被害者は、同市第七区泰華鎮珠海中路第九十号の
『丸一洋行』 店主・中野順三であった。

北海市には、八月二十四日、反蒋介石を主張する第十九路軍の一部、
○(分+羽) 照垣指揮の「抗日救国軍第一師」 約千五百人が進駐し、

随行してきた学生約三百人とともに、「打倒日本賊」 「打倒蒋介石漢奸」
などのビラをまき、市内要所にたむろしていた。

中野順三の店は、なかなかの盛業ぶりを示し、家族は第一、第二夫人、
男児四人、女児一人であった。

なぜ『丸一洋行』が対象になったかは不明だが、師長○(分+羽) 照垣は、
進駐してくると、商務局をつうじて立ち退き要求をくり返し、

中野順三も、やむなく承知して店じまいの準備をすすめていた。


すると、九月三日午後七時ごろ   ―

『丸一洋行』 に三十歳前後の男二人がはいってきて、はじめは買物客の風情で店内を
歩きまわっていたが、店番をしていた中野順三の長男清に、いきなり拳銃をつきつけた。

「(ここは) 日本人ノ店ナルベシ」

拳銃をむけられた長男清は、二人の質問に答える余裕もなく、
「オ父サン」 「オ父サン」と連呼しつつ、二階にかけのぼった。

二人は拳銃を発射した。その発砲音が合図であったらしく、いずれも十七、八歳の
青年四、五人が 「ジャック・ナイフ」 をふりまわしながら乱入してきた。


中野一家のうち、第二夫人は年少の男児三人をつれて外出中で、
店には中野当人のほかは第一夫人、長男清、長女千鶴子がいた。

第一夫人と長女千鶴子は、長男清のあとを追おうとしたが、
乱入してきた一味につきとばされた。

二階に殺到した一味は、食事中の中野順三におそいかかり、猿グツワをして
壁におしつけ、ナイフで右胸部、腹部、頸部を刺して、殺害した。

長男清は、その間に二階の裏窓からとびおりて逃げ、階段をはいのぼってきた
長女千鶴子が、なかば気失しながら、父親が刺殺される状況を目撃していた。》
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