1939年7月 ノモンハン24 捕虜にタバコを
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2012/12/01 14:17 投稿番号: [2084 / 2250]
辻正信著
「ノモンハン秘史」
毎日ワンズ
174〜176p
《 敵は、我が陣地に突入することなく、反転して退却した。
そのとき、弾丸は数発を残すのみであった。
一息ついたとき、余りの見事さに、何か褒美をやろうと思ったが、何もない。
ただ、最後まで図嚢の底に取っておいた恩賜の煙草を出して、一本宛分けてやった。
「頂いてよし」
という分隊長の声に、兵はさも美味そうに火をつけた。
機関銃弾や砲弾が絶え間なく飛んでくる中に、ゆっくり吸い終わった兵は、
御紋章のついた吸殻を勿体なさそうにいじっている。
分隊長はそれに気がついたらしい。
「おい、皆、吸殻をポケットに入れてお守りにせよ!」
兵たちは黙って吸殻をポケットに入れながら、
再び突進してきた新手の戦車の第二波に、また必中弾を浴びせた。
激しい戦場の小場面に、在りし日の皇軍の姿が偲ばれる。
捕虜の中尉は、眼を丸くして蟹のように伏せ脅えながらこの情景を眺めていた。
「よし、君にもご褒美にやる、しかし、
そんな恐そうな姿勢だから一本はやれないよ。半分で我慢せい!」
日に約千輌の自動車を以て補給されながら、日本軍よりも遥かに悪い給食で、
外蒙の草原に骨を曝すソ連兵に、一抹の同情を禁じ得ないものがあった。
彼らは出動以来一カ月になるが、酒や煙草の加給品は、何一つ貰ったことがない。
毎日一片の黒パンと岩塩だけだ。水もまた十分でなかっただろう。
我に倍する自動車を使いながら、全力を挙げて弾丸を、ガソリンを、送っていたのである。
一切の贅沢品を作らないで、戦車と飛行機の製造に全国力を傾けている
ソ連の底力には、敬服と驚嘆を禁じ得ない。
このようにしてもなお撃ち漏らした戦車の一部は、砲の間隙から我が歩兵線に突入したが、
火焔瓶と爆薬の肉迫攻撃で止めを刺した。
午後三時頃までに、戦場で炎上させた戦車は、少なくも百輌を下らなかったであろう。
小松原師団長が、第一線連隊の直後を乗用車で前進中、
側方から突進した約十両の戦車に肉迫されて危機一髪のとき、
師団砲兵の先頭中隊が、零距離射撃で数輌を炎上させて、
危機を脱し辛うじて第一線に追及された。
服部参謀はモス機に乗り、超低空で戦場上空を偵察中、
小松台付近で敵弾を受け、バラ高地南方の草原に墜落した。
しかし天祐にも炎上した飛行機中より脱出し、たちまち敵戦車に襲われたが、
師団長を救った砲兵によって危急を脱し、正午頃第一線に進出した。》
つづく
これは メッセージ 2082 (kir**gotowa**me さん)への返信です.
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