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1937年12月18日 松本重治氏の慰霊祭参列2

投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2012/11/13 18:40 投稿番号: [2047 / 2250]
  松井大将の涙の訓示

松本重治著   『上海時代・下』   246〜249p


《 私はそれで終ったかと思っていると、松井最高指揮官が、つと立ち上り、

朝香宮をはじめ参列者一同に対し、説教のような演説を始めた。

深堀中佐も私も、何が始まったのかと、訝   (いぶか)   りながら聴いていると、

「おまえたちは、せっかく皇威を輝かしたのに、一部の兵の暴行によって、

一挙にして、皇威を墜してしまった」   という叱責のことばだ。



しかも、老将軍は泣きながらも、凛として将兵らを叱っている。

「何たることを、おまえたちは、してくれたのか。

皇軍として、あるまじきことではないか。

おまえたちは、今日より以後は、あくまで軍規を厳正に、

絶対に無辜の民を虐げてはならぬ。それが、また戦病没者への供養となるであろう」

云々と、切々たる訓戒のことばであった。



私は、心に   「松井さん、よくやったなあ」   と叫び、深堀中佐を顧みて、

「日本軍の暴行、残虐は、今、世界に知らされているんだ。

何とかして松井大将の訓戒のニューズを世界に撒きたいのだ。

ぜひとも報導部長の同意を得たい」   と頼むと、深堀中佐は、

「松本君、僕は大賛成だ。だが、今すぐ方面軍の参謀からOKをとってくるから、

ちょっと待っていてくれ」   という。



二十分ほどすると、深堀中佐が戻ってきて、

「参謀は、あまり賛成しないといっている」   というので、私は、

「深堀中佐、このニューズの打電を許可してくれれば、報導部長として、

日本のための最大の貢献になるのですよ。これを許可しないというほうが

報導部長の責任になるのだと考えられないですか」   と詰め寄る。



深掘中佐は、しばし考えていたが、

「松本君、君の考え方が正しい。参謀が何といおうとかまわない。

自分は報導部長の責任において、ニューズの発表、打電を許可する」

「すごい。ありがとう。虐殺、暴行の噂は、少なからず聞いてはいたが、

松井大将の話を聞いてみると、現実に、ずいぶんわるいことを

やったらしいではありませんか。日本軍の名誉回復の一助としたいのです。

ぜひこの電報をやりましょうや」

「松本君、やってくれ」。 私は、深掘中佐の手をとって、握手をした。》



つづく
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