1938年8月30日 松本・梅思平会談
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2012/06/28 18:44 投稿番号: [1736 / 2250]
松本重治著
『上海時代・下』
中公新書
307〜309p
《 翌八月三十日午後三時、梅君が予約してくれたグロスターハウス・ホテルの
部屋に行き、梅君、周君と、すぐ本論に入った。
まず梅君から発言し、
「僕を推輓してくれたのは蒋介石であったと昨日も松本君に話したが、
そういう私情はこの際は問題にならない。
日本軍の撤兵の条件として、
日本側が蒋の下野を要求するのは、もっともだとは思うが、
中国側の事情としては、抗日戦争の指導者たる蒋介石の下野を、
日本側が条件として要求すれば、一切の交渉がだめになる。
もし宇垣外相が孔祥熙対手の交渉でそれを持ち出せば、
孔との交渉は、きっと早晩打切りになる。これは間違いがない。
仮に日本側が撤兵を声明し、現実に一部的に撤兵をやったって、
蒋が下野することは、中共が絶対反対になるに定っている。
ふたたび内戦の開始となって、とめどがなくなる。
中国の民生はどうなるか、事実、日中戦争をやっているのに、
また内戦となれば、中国の国民生活の苦しみは、想像を絶することになる。
僕らが和平を唱えるのも、中国の民生を考えるからだ。
内戦での国共の勝敗如何は第二の問題で、第一の問題は民生を保護することにある。
この考え方は、汪兆銘はじめ、周仏海、陶希聖、胡適、張君バイ
(萬+力)
ら、
みんな同じ考え方なのだ。根本は人道問題なのだ。
松本君、中国事情に通じている君にこれが解らんはずはないだろう」と、
論法鋭く詰め寄る。私にも解らぬこともないので、
「日本側の要求としての蒋介石の下野は、固執しない。
その点は、私も日本に行って説得しようが、二つの代案を君に考えてもらいたい。
第一は、蒋の下野は、中国側で措置すること、第二は満州国の承認だ。
第一の点は、撤兵声明を梃子にして中国側の和平運動を大々的に強化する。
そして、結果的には、抗戦継続反対の輿論が強くなれば、
蒋介石が名分を立てて下野し得ることにはならないかという点、
第二には、今まで、日本の政府と国民は、もう七年間も、『日満中の協力』
というスローガンを国策のシンボルと考えてきた。
だから、撤兵の第二の条件として、満州国の承認ということを、
日本側は、きっと主張するに違いない。
蒋介石の本心だって、抗戦の目的は、長城以南の領土的、行政的主権の完整にあるので、
東北四省は、場合によっては、どうでもよいというのではないか」
と論じた。
梅君は、「松本君のいうことは、中国にとって容易ではないが、
われわれにも、その二点は、充分に考慮に値すると思う。
東北四省が、
『赤く』
なってしまえば、われわれにも重大な危険を
感ずる次第だからである。イギリスなんかも、それを心配して、
リース・ロスをして、その点を持ち出させたのだ」
と答えた。》
つづく
これは メッセージ 1734 (kir**gotowa**me さん)への返信です.
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