「阻止する義務」の適用基準
投稿者: silverlining430 投稿日時: 2004/10/14 16:52 投稿番号: [1725 / 1982]
クライさん、こんにちは。
>>
主権国家が行なうWMD開発は通常「自衛のため」と説明されますよね。
サダムや北朝鮮が核をおもちゃにしたらかなわないというのはそのとおりですが、
何をベースに"おまえの国のWMDはだめだ"って決めるんでしょうか?
例えば日本が核武装を決定したとして、
国際社会の"阻止する義務"の適用を受けるのでしょうか?
>>
さすがですね。あなたのこういう議論の本質的な部分に注目できる力に本当に感心しております。
実は、夏にNYに出張し、「阻止する義務」の提唱者の一人であるアンマリーさんともお話したのですが、彼女曰く、「『阻止する義務』の適用基準をどうするかで難航している。基準をかなり精緻化しなければ、『阻止する義務』の適用は難しいだろう」ということだったのです。
アセアンさんの指摘は、すでに「阻止する義務」の考え方を的確に集約しているのですが、かなり入り組んだ複雑な概念でもありますので、僕の方でも少し整理させていただきます。
まず、「阻止する義務」の考え方のベースになった概念があるのですが、それがカナダの「人道的介入と国家主権に関する国際委員会」(別名:エバンス・サハヌーン委員会)が提唱した「保護する責任」なのです。
「保護する責任」の概念をかなり乱暴に要約しますと、ある国内の自国民を保護する責任を、第一義的にはその国の政府が負っていますが、内戦などで政府が破綻している場合、もしくは政府自ら自国民を虐殺する当事者である場合には、政府に代わって、国際社会がその国の国民を保護する責任を負う――という考え方です。
そもそも、アナン国連事務総長から人道的介入についてのガイドラインをつくるよう要請があり、その要請に応え登場したのが「保護する責任」の考え方でした。
「保護する責任」の考え方の核心部分に、「政府が<国民を保護するために>機能していない」という問題意識があり、この問題意識と呼応して登場しているのが「阻止する義務」の概念である――という理解になります。
で、軍縮・軍備管理の現行の国際法規範レジームについてなのですが、焦点は特定の兵器の実物を規制することにあります。現時点で兵器を有していない、もしくは戦争で使えるだけの兵器を持っていない国が、これから兵器、とくに国際条約で禁止されている兵器を開発しようとしている場合、それをどうするのか?
すでに兵器を持っている国で、外交交渉主体となりえる政府が存在する国である場合、既存の軍縮・軍備管理レジームに参加させることで、規制対象に一応はなり得ます。国内における野党やメディアなどによる政権チェック機能が存在していることも重要でしょう。
で、問題は既存の軍縮・軍備管理関係の国際法規範レジームでは規制できない国、もしくは非国家主体がある場合どうするのか?――という点です。
特にアセアンさんが仰っていた、
>>
つまり視野狭窄の独裁者とその技術的に未熟な体制が持つ
大量破壊兵器ってのは定義づけ以前の段階で危ない?
危なかっしい?ってのがあるんだと思いますが・・・・
それに、独裁体制下では全ての人間が『自分に都合の良いこと
しか言わない』だろうし・・・・
>>
という部分が、「阻止する義務」が「保護する責任」に呼応する形で登場した概念であることの説明とも関係してきます。
つまり、「保護する責任」では、「国家(政府)が<自国民を保護するための>能力・機能を持たない」ということが問題になっていたのに対し、「阻止する義務」では、「国家(特に独裁体制の国)が<WMDを管理し、その用途を抑制する>能力・機能を持たない」場合、国際社会が介入し、代わりにその国のWMD関連の計画の段階から管理し、場合によっては止めさせる――そういう義務を国際社会が持っているという考え方なのです。
続きます。
(やっぱ長くなるな…)
>>
主権国家が行なうWMD開発は通常「自衛のため」と説明されますよね。
サダムや北朝鮮が核をおもちゃにしたらかなわないというのはそのとおりですが、
何をベースに"おまえの国のWMDはだめだ"って決めるんでしょうか?
例えば日本が核武装を決定したとして、
国際社会の"阻止する義務"の適用を受けるのでしょうか?
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さすがですね。あなたのこういう議論の本質的な部分に注目できる力に本当に感心しております。
実は、夏にNYに出張し、「阻止する義務」の提唱者の一人であるアンマリーさんともお話したのですが、彼女曰く、「『阻止する義務』の適用基準をどうするかで難航している。基準をかなり精緻化しなければ、『阻止する義務』の適用は難しいだろう」ということだったのです。
アセアンさんの指摘は、すでに「阻止する義務」の考え方を的確に集約しているのですが、かなり入り組んだ複雑な概念でもありますので、僕の方でも少し整理させていただきます。
まず、「阻止する義務」の考え方のベースになった概念があるのですが、それがカナダの「人道的介入と国家主権に関する国際委員会」(別名:エバンス・サハヌーン委員会)が提唱した「保護する責任」なのです。
「保護する責任」の概念をかなり乱暴に要約しますと、ある国内の自国民を保護する責任を、第一義的にはその国の政府が負っていますが、内戦などで政府が破綻している場合、もしくは政府自ら自国民を虐殺する当事者である場合には、政府に代わって、国際社会がその国の国民を保護する責任を負う――という考え方です。
そもそも、アナン国連事務総長から人道的介入についてのガイドラインをつくるよう要請があり、その要請に応え登場したのが「保護する責任」の考え方でした。
「保護する責任」の考え方の核心部分に、「政府が<国民を保護するために>機能していない」という問題意識があり、この問題意識と呼応して登場しているのが「阻止する義務」の概念である――という理解になります。
で、軍縮・軍備管理の現行の国際法規範レジームについてなのですが、焦点は特定の兵器の実物を規制することにあります。現時点で兵器を有していない、もしくは戦争で使えるだけの兵器を持っていない国が、これから兵器、とくに国際条約で禁止されている兵器を開発しようとしている場合、それをどうするのか?
すでに兵器を持っている国で、外交交渉主体となりえる政府が存在する国である場合、既存の軍縮・軍備管理レジームに参加させることで、規制対象に一応はなり得ます。国内における野党やメディアなどによる政権チェック機能が存在していることも重要でしょう。
で、問題は既存の軍縮・軍備管理関係の国際法規範レジームでは規制できない国、もしくは非国家主体がある場合どうするのか?――という点です。
特にアセアンさんが仰っていた、
>>
つまり視野狭窄の独裁者とその技術的に未熟な体制が持つ
大量破壊兵器ってのは定義づけ以前の段階で危ない?
危なかっしい?ってのがあるんだと思いますが・・・・
それに、独裁体制下では全ての人間が『自分に都合の良いこと
しか言わない』だろうし・・・・
>>
という部分が、「阻止する義務」が「保護する責任」に呼応する形で登場した概念であることの説明とも関係してきます。
つまり、「保護する責任」では、「国家(政府)が<自国民を保護するための>能力・機能を持たない」ということが問題になっていたのに対し、「阻止する義務」では、「国家(特に独裁体制の国)が<WMDを管理し、その用途を抑制する>能力・機能を持たない」場合、国際社会が介入し、代わりにその国のWMD関連の計画の段階から管理し、場合によっては止めさせる――そういう義務を国際社会が持っているという考え方なのです。
続きます。
(やっぱ長くなるな…)
これは メッセージ 1721 (cry_wolfowitz さん)への返信です.
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