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乃木大将の漢文詩一首

投稿者: unhoo 投稿日時: 2007/06/19 11:44 投稿番号: [8643 / 10346]
乃木大将の漢文詩と一般におこなわれている訓読:

山川草木轉荒涼    山川草木転(うた)た荒涼
十里風腥新戰場    十里風腥(なまぐさ)し新戦場
征馬不前人不語    征馬前(すす)まず人語らず
金州城外立斜陽    金州城外斜陽に立つ

ずっと以前に、ある外省人が新聞に書いた随筆に、日清戦争に言及したものがあって、その中にこの詩が引用してあった。ところがその人は原作をすこし記憶違いして、第二句と第四句とが原作とは違ったものにしてしまった。

山川草木轉荒涼
風腥十里新戰場    風腥(なまぐさ)き十里、新戦場
征馬不前人不語
金州城外夕陽斜    金州城外夕陽(せきよう)斜なり

これを原作と比べてみると、外省人が記憶違いして書いたものの方が漢文としては正しい。しかし訓読で読むかぎり、第二句は原作のほうがよい。

乃木大将は訓読法だけで漢文を習ったから、漢文詩を作るにも先ず日本語で作ってから、それを漢文に書き直した。しかし日本語を仲介せずに、漢文だけで文案を練るとしたら、第二句はどうしても風腥十里新戰場が漢文として自然である。おまけに詩としてこのほうが迫力がある。

第四句、乃木大将は「夕日に照らされた金州城」という光景を漢字七字で書こうとして苦心したのであろう。どうしても七字でまとめることができなくて、ついに「立」という役にも立たない字をいれた。「立斜陽」を忠実に訓読するとしたら「斜陽を立つ」となる。これでは意味がわからないから、「斜陽に立つ」という強引な訓読が通行している。「金秋城外の斜陽のなかにわたしは立っている」という意味だが、これでは詩としてもまずい。そこを外省人の記憶の中では「金州城外夕陽斜」といとも自然な表現に改良されたのだ。

外省人が記憶の中で無意識に改良してしまった詩を、日本の「漢音」で音読してみよう。自然にリズムが出てくる。

さんせんそうぼくてんこうりょう
ふうせいじゅうりしんせんじょう
せいばふぜんじんふご
きんしゅうじょうがいせきようしゃ
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