紫陽花亭日乗

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刺客列傳 第五話 「荊軻」 起の段 5 

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/08/04 19:19 投稿番号: [256 / 735]
燕君臣皆恐禍之至。太子丹患之、問其傳鞠武。
武對曰。秦地遍天下、威脅韓・魏・趙氏。北有甘泉・谷口之固。
南有芤・渭之沃、擅巴・漢之饒、右隴・蜀之山、左關・●之險。
民衆而士窅、兵革有餘。意有所出、則長城之南、易水以北、未有所定也。
奈何以見陵之怨、欲批其逆鱗哉。丹曰。然則何由。對曰。請入圖之。

★「遍」の原字は「シンニョウ」が「ギョウニンベン」
★「奈」の原字は、上の部分が「木」

UP されないので代えてあります。

●「肴」+「几」+「又」    コウ


燕の君臣皆禍の至るを恐る。太子丹これをを患い、その傳(ふ)鞠武に問う。
武對(こた)えて曰く、秦の地天下にあまねき、威、韓・魏・趙氏を脅(おびやか)す。
北に甘泉・谷口(こくこう)の固(かため)を有す。南に芤・渭の沃を有し、
巴・漢の饒を擅(ほしいまま)にし、右に隴・蜀の山、左に關・●(こう)の險あり。
民衆(おお)くして士窅(たけだけ)し。兵革餘(あまり)有り。
意の出(いづ)る所有らば、則ち長城の南、易水以北、未だ定むる所有らざるなり。
奈何(いかん)ぞ陵(しのが)るるの怨みを以て、
其の逆鱗(げきりん)を批(う)たんと欲するや。
丹曰く、然らば則ち何に由(よ)らん。
對へて曰く、請ふ入りてこれを圖(はか)らん。


燕では上下を挙げて皆禍の至ることを恐れた。
太子丹もこのことを憂えて、どうしたらよいかを自分の傅り役(教育係)の
鞠武(きくぶ)にたずねた。武が答えて云うには、

「秦の領土は天下に広く行き渡り、秦の威力は、韓・魏・趙を
脅(おびやか)しています。
北に甘泉・谷口(こくこう)の自然の要害があり、南に芤水・渭水の恵みに
よる沃野を有し、巴・漢の豊饒を占有し、右に隴・蜀の山々、左に函谷関・
●(こう)の険しい難所があります。
人口は多く士卒は精鋭で、武器や鎧は有り余っております。
秦に出兵する意思があれば、長城の南、易水以北(燕)などは、
どうなるかわかりません。
忍び難いほどの恨みがあるからといって、どうして秦の逆鱗(げきりん)に
触れようなどと思われるのですか」

丹は言った。「それなら一体どうしたらよいのだ」

鞠武が答えた。「奥へ入って、これについてご相談したいと思うのですが」



★逆鱗・・・龍の逆鱗に触れると龍が怒って人を食い殺すという伝説から、
君主を諫めて君主の怒りをこうむること。『韓非子』「説難・ぜいなん」

http://www23.tok2.com/home/rainy/seigo-gekirin.htm

夫龍之為蟲也、柔可狎而騎也、然其喉下有逆鱗径尺、若人有嬰之者、
則必殺人。人主亦有逆鱗。説者能無嬰人主之逆鱗、則幾矣。


そもそも龍という動物は、おとなしくしている時には、
人が慣らしてその背に乗る事ができる。
しかし喉(のど)もとには一尺ばかり逆さに生えた鱗があり、
もし人がそれに触れると、龍は必ず人を殺してしまう。
人間の君主にもまた、この逆鱗(げきりん)がある。
意見を述べる者は、君主の逆鱗に触れないようにできたならば、
成功を収める事も望めるのだ。


つづく

646, 647
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