Re: 731部隊細菌戦裁判
投稿者: nyankotyanndamon 投稿日時: 2009/03/16 20:52 投稿番号: [28181 / 41162]
しかしながら,現在の実定法体系の中に原告らがいうような条理が存在している
と認めることができないことは,前記5で説示したとおりである。もとより,補償
は法益侵害に対しされるものであるが,国会は,そのような法益侵害の内容・程度
等を含む様々な事情を前提に広範な裁量権を行使して政治的ないし外交的判断をす
ることができ,またそれを期待されているのであって,国会が原告らのいうような
事情から原告らのいう法的な作為義務を負っているということはできない。そし
て,このことは,本件細菌戦被害の内容及び本件細菌戦に対する法的評価を前提に
しても,この点が中国との間で国際法上は決着していることを考慮すれば,同様と
いわざるを得ない。
イ 次に原告らの挙げる憲法の関係条文について検討する。
(ア) 憲法前文について
憲法前文には,裁判規範性はなく,これから具体的な事項についての立法義務が
生ずることはない。
(イ) 憲法9条,13条,14条について
上記各条は,平和主義・戦争放棄(9条),個人の尊重,生命・自由・幸福追求
の権利の尊重(13条),法の下の平等(14条)を定めたもので,これらはいず
れも戦争被害者に対する国の損害賠償ないし補償の立法措置を講ずべき義務を一義
的に定めたものではない。
(ウ) 憲法17条について
同条は「何人も,公務員の不法行為により,損害を受けたときは,法律の定める
ところにより,国又は公共団体に,その賠償を求めることができる。」と規定して
国の賠償責任の内容を法律に委ねているのであって,その内容が憲法上一義的に定
まっているとはいえず,また,憲法施行前の公務員の不法行為について特定の内容
の立法をすべきことを一義的に定めているともいえない。
(エ) 憲法29条1項・3項について
同条項は,財産権の保障及び財産権についての特別な犠牲に対する補償を規定し
ているが,原告らが本訴で主張する損害は財産権に対する特別な犠牲とはいえない
上に,上記各条項から戦争被害者に対する国の損害賠償ないし補償の立法措置を講
ずべき義務が一義的に定められているということもできない。
ウ また,原告らは,前記5(3)のイの我が国や諸外国における戦後補償立法
に関する国内及び国際的潮流からすれば,違法な戦争行為の被害に対し賠償・補償
をすることは国際慣習法として確立しているから,憲法98条2項の公務員の国際
慣習法の遵守義務からして,国会には本件に係る賠償立法をすべき義務が課せられ
ていると主張している。
しかし,前記1の(8),2,5に説示したところに照らすと,原告らが主張するよ
うな国際慣習法が確立しているとはいえず,したがって,このことから国会に本件
に係る賠償ないし補償措置立法をすべき義務が一義的に課せられているということ
はできない。
エ さらに,原告らは,平成5年のI1日誌の発見以降の事実経過から,遅くとも
最高裁平成9年8月29日第三小法廷判決(民集51巻7号2921ページ)から
2年を経過した平成11年8月には本件細菌戦被害者の救済措置立法に係る不作為
が違法になったと主張している。
しかし,原告らの上記主張は,独自の判断基準に基づくものであって,これによ
って当該立法不作為が違法であるとはいえないし,当裁判所の判断基準によって
も,原告らのいうような事情によって国会が本件細菌戦被害者に対する賠償ないし
補償措置立法をする義務が一義的に生じていたとすることはできない。
オ まとめ
以上のとおりであって,本件細菌戦による被害は誠に悲惨かつ甚大であり,旧日
本軍による当該戦闘行為は非人道的なものであったとの評価を免れないと解される
ものの,法的な枠組みに従って検討する限り,被告の国会に国家賠償法1条1項に
いう違法な立法不作為があるとすることはできない。
そこで,本件細菌戦被害に対し我が国が何らかの補償等を検討するとなれば,我
が国の国内法ないしは国内的措置によって対処することになると考えられるとこ
ろ,何らかの対処をするかどうか,仮に何らかの対処をする場合にどのような内容
の対処をするのかは,国会において,以上に説示したような事情等の様々な事情を
前提に,高次の裁量により決すべき性格のものと解される。
(6) 以上のように,国会に本件細菌戦被害者に係る救済措置立法をしなかった
不作為の違法があるとはいえず,これに基づく原告らの請求は理由がない。
と認めることができないことは,前記5で説示したとおりである。もとより,補償
は法益侵害に対しされるものであるが,国会は,そのような法益侵害の内容・程度
等を含む様々な事情を前提に広範な裁量権を行使して政治的ないし外交的判断をす
ることができ,またそれを期待されているのであって,国会が原告らのいうような
事情から原告らのいう法的な作為義務を負っているということはできない。そし
て,このことは,本件細菌戦被害の内容及び本件細菌戦に対する法的評価を前提に
しても,この点が中国との間で国際法上は決着していることを考慮すれば,同様と
いわざるを得ない。
イ 次に原告らの挙げる憲法の関係条文について検討する。
(ア) 憲法前文について
憲法前文には,裁判規範性はなく,これから具体的な事項についての立法義務が
生ずることはない。
(イ) 憲法9条,13条,14条について
上記各条は,平和主義・戦争放棄(9条),個人の尊重,生命・自由・幸福追求
の権利の尊重(13条),法の下の平等(14条)を定めたもので,これらはいず
れも戦争被害者に対する国の損害賠償ないし補償の立法措置を講ずべき義務を一義
的に定めたものではない。
(ウ) 憲法17条について
同条は「何人も,公務員の不法行為により,損害を受けたときは,法律の定める
ところにより,国又は公共団体に,その賠償を求めることができる。」と規定して
国の賠償責任の内容を法律に委ねているのであって,その内容が憲法上一義的に定
まっているとはいえず,また,憲法施行前の公務員の不法行為について特定の内容
の立法をすべきことを一義的に定めているともいえない。
(エ) 憲法29条1項・3項について
同条項は,財産権の保障及び財産権についての特別な犠牲に対する補償を規定し
ているが,原告らが本訴で主張する損害は財産権に対する特別な犠牲とはいえない
上に,上記各条項から戦争被害者に対する国の損害賠償ないし補償の立法措置を講
ずべき義務が一義的に定められているということもできない。
ウ また,原告らは,前記5(3)のイの我が国や諸外国における戦後補償立法
に関する国内及び国際的潮流からすれば,違法な戦争行為の被害に対し賠償・補償
をすることは国際慣習法として確立しているから,憲法98条2項の公務員の国際
慣習法の遵守義務からして,国会には本件に係る賠償立法をすべき義務が課せられ
ていると主張している。
しかし,前記1の(8),2,5に説示したところに照らすと,原告らが主張するよ
うな国際慣習法が確立しているとはいえず,したがって,このことから国会に本件
に係る賠償ないし補償措置立法をすべき義務が一義的に課せられているということ
はできない。
エ さらに,原告らは,平成5年のI1日誌の発見以降の事実経過から,遅くとも
最高裁平成9年8月29日第三小法廷判決(民集51巻7号2921ページ)から
2年を経過した平成11年8月には本件細菌戦被害者の救済措置立法に係る不作為
が違法になったと主張している。
しかし,原告らの上記主張は,独自の判断基準に基づくものであって,これによ
って当該立法不作為が違法であるとはいえないし,当裁判所の判断基準によって
も,原告らのいうような事情によって国会が本件細菌戦被害者に対する賠償ないし
補償措置立法をする義務が一義的に生じていたとすることはできない。
オ まとめ
以上のとおりであって,本件細菌戦による被害は誠に悲惨かつ甚大であり,旧日
本軍による当該戦闘行為は非人道的なものであったとの評価を免れないと解される
ものの,法的な枠組みに従って検討する限り,被告の国会に国家賠償法1条1項に
いう違法な立法不作為があるとすることはできない。
そこで,本件細菌戦被害に対し我が国が何らかの補償等を検討するとなれば,我
が国の国内法ないしは国内的措置によって対処することになると考えられるとこ
ろ,何らかの対処をするかどうか,仮に何らかの対処をする場合にどのような内容
の対処をするのかは,国会において,以上に説示したような事情等の様々な事情を
前提に,高次の裁量により決すべき性格のものと解される。
(6) 以上のように,国会に本件細菌戦被害者に係る救済措置立法をしなかった
不作為の違法があるとはいえず,これに基づく原告らの請求は理由がない。
これは メッセージ 28178 (fukagawatohei さん)への返信です.