7月29日 通州守備隊襲撃される2
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/12/23 15:56 投稿番号: [676 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇
盧溝橋事件』 読売新聞社刊
373〜374p
《 敵は午前九時、守備隊東北方二、三百メートル、満州電電会社の高い建物を占領し、
脚下の広場に野砲四門を据えつけ始めた。
命中精度は次第によくなって、弾は守備隊中央の煙突を吹き飛ばし、
また本部東面、煉瓦造りの兵舎の一角を粉砕した。
当時守備隊の装備は、軽機関銃と小銃、それに手榴弾があるだけで、重火器は何も
持っていない。遥かに装備優秀な保安隊に対して、もう手も足も出せない実情であった。
山田自動車隊の木造兵舎は、二十発の流弾をたたき込まれ、全壊に近い状態だった。
山田中隊長のすぐ眼の前で、軽機関銃を操作中だった堀尾英一上等兵に、
野砲の弾丸が命中して、一瞬に影も形もなくなった。あおりを食って、
中隊長は横の壁にたたきつけられたが、幸い擦 (かす) り傷一つ負わなかった。
営庭の東南角に二千五百缶のガソリンが、うず高く積み重ねられてあった。
午前十一時、敵の砲弾が一発、その真っただ中で炸裂した。
物凄い爆発音もろ共、火焔は天に沖 (ちゅう) して巻き上り、黒煙は地上数百メートルの
高さに立ちこめて、城内一帯夕暮のような薄闇の中に包まれてしまった。
敵も味方も暫らくの間、視界が完全に閉ざされてしまった。敵はこの爆発が
余りにも凄まじかったため、それに気をとられて砲撃を止めてしまった。
このとき、日本軍の飛行機一機が、にわかに立ち登ったこのおびただしい黒煙を
いぶかって、東南の空から通州の街に近づいて来た。
将兵は飛行隊の救援だと雀躍乱舞した。
この飛行機は、
鈴木混成旅団に配属されたプスモス機で、操縦は満州航空の飯島飛行士。
つまり七月十六日朝、私を古北口から通州まで運んでくれたあの飛行機だったのである。
機は下げ舵をとって高度五、六百メートルまで舞い降りて来た。
そして通州の上空を数回、輪を描いて偵察していたが、やがてアッサリ機首を
北に向け、熱河の空指して飛び去って行ってしまった。
一時間ばかり沈黙していた敵の砲は、思い出したように再び砲撃を始めだした。
いったい、砲撃というのは、遠距離からする場合は、ヒュルヒュルヒュルドカーン、
という音がして、勇ましい戦場気分を盛り立てるが、今、保安隊が射ってくる
ゼロ距離射撃とは、発射音と炸裂音とが全く同時である。
ダダーン、と射ったが最後、建物が活発に三センチばかりも水平動を起し、
鼓膜は突き貫かれたようにキーンとして、
呼吸が一時、吸い込んだままで止まってしまう。そこへ煉瓦の破片、土くれや
木片が、頭の上からバラバラッと覆いかぶさるように降ってくるのだ。
その近距離射撃がこんどは弾薬を満載したトラックの一台に命中して火災を起した。
銃砲弾はつぎからつぎへと自爆を起して、万雷の一時に落ちるような大音響である。
砲弾の破片がうなりを生じて四周に飛散する。》
つづく
これは メッセージ 675 (kireigotowadame さん)への返信です.
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