7月26日 広部大隊救出行動4
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/12/09 18:41 投稿番号: [661 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇
盧溝橋事件』 読売新聞社刊
337〜338p
《「しかしどう考えてみても残念ですなあ、
夜襲の準備はもうスッカリ出来上っているんですから。
ことにさきほど来の戦闘で、私は数名の部下を殺し、
十数名の負傷者をつくってしまいました。
この仇だけは何としてでも、とってやらなければなりません」
「ごもっもです。大隊長殿のお気持はよくわかります。
ただ、それについて簡単に申し上げますが、実は今日午後三時から、三時間にわたって、
私は松井特務機関長のお伴をして、宋哲元の所に行き、日本軍としての最後の通牒を
たたきつけてきました。それで二十八日の正午から、軍はいよいよ全面的に、
二十九軍剿滅のための攻撃行動を起すことに肚が決まったのです。
ですのにそういうふうに方針が決まった以上、戦死者の仇討ちをするチャンスは、
これからいくらだって出来て来ます。
この広安門という一小局部で、抜き差しならぬ戦闘をひき起し、
これ以上損害を拡大されるより、むしろ大乗的な立場に立って、
今日のところは一応これを断念していただきたいと思います。ことに軍司令官閣下は、
概要、私が今、申し上げましたと同じようなお考えを持っておられまして、
広安門事件は、現地限りで解決せよとの趣旨を、
さきほど天津から電話で連絡して参りました」
「そうですか。よくわかりました。しかしただ一つ、私として考えます事は、
現在我々を包囲している中国軍についてです。我々の任務からいったら、
一刻も早くこの位置を撤して、公使館区域に入るのがいいかも知れませんが、
その移動途中、包囲中の中国軍と衝突する事、これはどうしても避けられません。
いずれにせよ一戦交えなければならないというのなら、むしろ勝算の確実な、
広安門を攻撃した方が賢明の策だと考えるのです」
「それはご心配には及びません。私達は今ここへ来る途中、
包囲中の中国軍をことごとく本道上から撤退させて参りました。
ここから公使館区域までの通路は、完全に清掃が出来ています」
と今までの経過をかいつまんで説明した。
最後に
「そういうわけですから、この方面の中国軍の行動に関しては、全責任を私が負います。
一切は私達がよく心得ておりますから、どうぞご安心なさって下さい」
「今あなた方が来られる時には、一応いう事を聞いて道をあけてくれたかも
知れませんが、相手は何といっても中国軍です。
後の心境の変化という事も考えなければなりません。
その辺の見透しは、いったいどんなものでしょうか」
「もちろん心境の変化という事に関しては、十分考慮しなければなりません。
しかしそのためには、ただ今も気心の知れた中国軍の参謀に、
私の方の通訳生一名をつけて、今来た経路をもう一遍引き返させ、
中国軍の撤退情況を再点検させております」
「有り難う。それほどまでにやっていて下さるのならば
ご意見に従って直ちに撤退を開始する事に致しましょう。
高須大尉に高杉大尉、それから山本副官、他に何か意見はないか」
「自動車が大半損傷をうけているようですが、果して運転出来ますかどうか……」
「すぐ調べさせてみい、動く事だけは動くだろうと思うんだが」
「それからもし、中国軍が途中で不法射撃でも始めたような場合の措置は」
「たたき破るんだ、徹底的にたたき破って目的地に前進するんだ!」
「わかりました。兵にも、よく徹底させます」》
つづく
337〜338p
《「しかしどう考えてみても残念ですなあ、
夜襲の準備はもうスッカリ出来上っているんですから。
ことにさきほど来の戦闘で、私は数名の部下を殺し、
十数名の負傷者をつくってしまいました。
この仇だけは何としてでも、とってやらなければなりません」
「ごもっもです。大隊長殿のお気持はよくわかります。
ただ、それについて簡単に申し上げますが、実は今日午後三時から、三時間にわたって、
私は松井特務機関長のお伴をして、宋哲元の所に行き、日本軍としての最後の通牒を
たたきつけてきました。それで二十八日の正午から、軍はいよいよ全面的に、
二十九軍剿滅のための攻撃行動を起すことに肚が決まったのです。
ですのにそういうふうに方針が決まった以上、戦死者の仇討ちをするチャンスは、
これからいくらだって出来て来ます。
この広安門という一小局部で、抜き差しならぬ戦闘をひき起し、
これ以上損害を拡大されるより、むしろ大乗的な立場に立って、
今日のところは一応これを断念していただきたいと思います。ことに軍司令官閣下は、
概要、私が今、申し上げましたと同じようなお考えを持っておられまして、
広安門事件は、現地限りで解決せよとの趣旨を、
さきほど天津から電話で連絡して参りました」
「そうですか。よくわかりました。しかしただ一つ、私として考えます事は、
現在我々を包囲している中国軍についてです。我々の任務からいったら、
一刻も早くこの位置を撤して、公使館区域に入るのがいいかも知れませんが、
その移動途中、包囲中の中国軍と衝突する事、これはどうしても避けられません。
いずれにせよ一戦交えなければならないというのなら、むしろ勝算の確実な、
広安門を攻撃した方が賢明の策だと考えるのです」
「それはご心配には及びません。私達は今ここへ来る途中、
包囲中の中国軍をことごとく本道上から撤退させて参りました。
ここから公使館区域までの通路は、完全に清掃が出来ています」
と今までの経過をかいつまんで説明した。
最後に
「そういうわけですから、この方面の中国軍の行動に関しては、全責任を私が負います。
一切は私達がよく心得ておりますから、どうぞご安心なさって下さい」
「今あなた方が来られる時には、一応いう事を聞いて道をあけてくれたかも
知れませんが、相手は何といっても中国軍です。
後の心境の変化という事も考えなければなりません。
その辺の見透しは、いったいどんなものでしょうか」
「もちろん心境の変化という事に関しては、十分考慮しなければなりません。
しかしそのためには、ただ今も気心の知れた中国軍の参謀に、
私の方の通訳生一名をつけて、今来た経路をもう一遍引き返させ、
中国軍の撤退情況を再点検させております」
「有り難う。それほどまでにやっていて下さるのならば
ご意見に従って直ちに撤退を開始する事に致しましょう。
高須大尉に高杉大尉、それから山本副官、他に何か意見はないか」
「自動車が大半損傷をうけているようですが、果して運転出来ますかどうか……」
「すぐ調べさせてみい、動く事だけは動くだろうと思うんだが」
「それからもし、中国軍が途中で不法射撃でも始めたような場合の措置は」
「たたき破るんだ、徹底的にたたき破って目的地に前進するんだ!」
「わかりました。兵にも、よく徹底させます」》
つづく
これは メッセージ 660 (kireigotowadame さん)への返信です.