7月21日 松井機関長、秦徳純を面責
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/10/30 15:35 投稿番号: [620 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇
盧溝橋事件』 読売新聞社刊
279〜281p
《 午後五時、両顧問は今日の情況を交々機関長に報告した。
・・・・・
機関長はそれを聞き終ると
「・・・・オイ補佐官! 電話で斉燮元と今井武官に、
大至急おいでを願いたいと連絡してくれ」
間もなく今井武官が駆けつけて来た。次で斉燮元もやって来た。
機関長は今日の経緯を逐一説明した後
「ともかく、私は今から進徳社に、冀察首脳部の背信行為を詰問しに出かけます。
斉さん! それから中島顧問も問題の証人だ。私と一緒に付いて来て下さい」
機関長の顔は決意に引き緊っていた。 今井武官は 「それじゃ私も一緒に
お伴しましょう。私は他にも一、二連絡の要件を持ってますから」
午後五時四十五分、一同は自動車三台を連ねて進徳社に向って急行した。
進徳社の大広間では今の四人、それに秦徳純、張越亭を交えて、
撤退問題に関する息詰まるような交渉が展開された。
松井機関長は鋭い眼でギロリ、中国側を見渡した後、重々しい口調で語り始めた。
「我々は今日まで、日華親善と東亜の和平を念願し、このため少なからざる努力を
傾倒してきました。それにも拘らず冀察側最近の態度はいったい何です。
我々の意のあるところを少しも解せず、誠意の見るべきものが全然ないじゃありませんか。
その行動たるや協調性を欠き、むしろ日本側をペテンにかけて、
故意に事を荒ら立てようとする態度さえ見うけられる」
秦徳純、張越亭はいかにも困ったという表情を面に浮べてこれにうなずいた。
部屋の中はシーンとして、ただ、機関長の声だけが大きく響いてくる。
「昨日宋委員長がこの私と、直接協定した三十七師の撤退命令、それが衙門口には
達したけれど八宝山には届いていない。これはいったいどういうカラクリです。
八宝山あたりの空気は撤退どころか、かえって敵対意識極めて旺盛ですぞ。
今、私の述べた言葉が、日本側の作為的報告だと思われるなら、
我が軍事顧問と一緒に現地に行ったあなたの方の責任者、
周副処長、周参謀をここに呼んで来て聞いてみられるがいい」
「…………」
「宋委員長は確かに命令を下した。当の何旅長は全然これを受け取っていない。
いったいだれがこの命令を中間で握りつぶしてしまったんです。
こういう行動こそ両国の親善を根本的にブチ毀す、非常に大きな癌なのです。
日本側はいかにお人よしだとはいえ、これ以上の隠忍はもう出来ません。今から
我々は、我々の信念に基いて、独自の行動をとる事にします。左様ご承知おき下さい」
機関長は興奮した面持でここまで話すと、後はもう用はないといわんばかりに、
決然、席を蹴って立ち上った。
冀察側はその言葉、その態度にスッカリ狼狽して、・・・・
彼はあわてて機関長を押しとどめた。
「まあちょっと待って下さい。そういわれずにちょっと待って下さい。
部隊は必ず撤退させますから!」
それでもなお立ち去ろうとする機関長を、秦徳純はむりやり席に戻らせて、張越亭を
別室に招き、二、三何事か相談したらしかったが、やがてまたもとの席に戻って来た。
「誠に申し訳ありません。八宝山付近の三十七師は、今夜八時までに必ず撤退させます。
また西苑や城内に在る三十七師は、明二十二日、京漢線の開通を待って、
直ちに保定に向って撤退させます。なにとぞご承諾を願います」
と嘆願するように申し出た。》
つづく
279〜281p
《 午後五時、両顧問は今日の情況を交々機関長に報告した。
・・・・・
機関長はそれを聞き終ると
「・・・・オイ補佐官! 電話で斉燮元と今井武官に、
大至急おいでを願いたいと連絡してくれ」
間もなく今井武官が駆けつけて来た。次で斉燮元もやって来た。
機関長は今日の経緯を逐一説明した後
「ともかく、私は今から進徳社に、冀察首脳部の背信行為を詰問しに出かけます。
斉さん! それから中島顧問も問題の証人だ。私と一緒に付いて来て下さい」
機関長の顔は決意に引き緊っていた。 今井武官は 「それじゃ私も一緒に
お伴しましょう。私は他にも一、二連絡の要件を持ってますから」
午後五時四十五分、一同は自動車三台を連ねて進徳社に向って急行した。
進徳社の大広間では今の四人、それに秦徳純、張越亭を交えて、
撤退問題に関する息詰まるような交渉が展開された。
松井機関長は鋭い眼でギロリ、中国側を見渡した後、重々しい口調で語り始めた。
「我々は今日まで、日華親善と東亜の和平を念願し、このため少なからざる努力を
傾倒してきました。それにも拘らず冀察側最近の態度はいったい何です。
我々の意のあるところを少しも解せず、誠意の見るべきものが全然ないじゃありませんか。
その行動たるや協調性を欠き、むしろ日本側をペテンにかけて、
故意に事を荒ら立てようとする態度さえ見うけられる」
秦徳純、張越亭はいかにも困ったという表情を面に浮べてこれにうなずいた。
部屋の中はシーンとして、ただ、機関長の声だけが大きく響いてくる。
「昨日宋委員長がこの私と、直接協定した三十七師の撤退命令、それが衙門口には
達したけれど八宝山には届いていない。これはいったいどういうカラクリです。
八宝山あたりの空気は撤退どころか、かえって敵対意識極めて旺盛ですぞ。
今、私の述べた言葉が、日本側の作為的報告だと思われるなら、
我が軍事顧問と一緒に現地に行ったあなたの方の責任者、
周副処長、周参謀をここに呼んで来て聞いてみられるがいい」
「…………」
「宋委員長は確かに命令を下した。当の何旅長は全然これを受け取っていない。
いったいだれがこの命令を中間で握りつぶしてしまったんです。
こういう行動こそ両国の親善を根本的にブチ毀す、非常に大きな癌なのです。
日本側はいかにお人よしだとはいえ、これ以上の隠忍はもう出来ません。今から
我々は、我々の信念に基いて、独自の行動をとる事にします。左様ご承知おき下さい」
機関長は興奮した面持でここまで話すと、後はもう用はないといわんばかりに、
決然、席を蹴って立ち上った。
冀察側はその言葉、その態度にスッカリ狼狽して、・・・・
彼はあわてて機関長を押しとどめた。
「まあちょっと待って下さい。そういわれずにちょっと待って下さい。
部隊は必ず撤退させますから!」
それでもなお立ち去ろうとする機関長を、秦徳純はむりやり席に戻らせて、張越亭を
別室に招き、二、三何事か相談したらしかったが、やがてまたもとの席に戻って来た。
「誠に申し訳ありません。八宝山付近の三十七師は、今夜八時までに必ず撤退させます。
また西苑や城内に在る三十七師は、明二十二日、京漢線の開通を待って、
直ちに保定に向って撤退させます。なにとぞご承諾を願います」
と嘆願するように申し出た。》
つづく
これは メッセージ 619 (kireigotowadame さん)への返信です.