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7月20日 29軍北京撤退の詰め

投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/10/28 18:29 投稿番号: [618 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇   盧溝橋事件』 読売新聞社刊
270〜272p

《 七月二十日午前九時、斉燮元 (さいしょうげん) が特務機関を訪れて来た。
松井機関長と私とは、大応接室でこの冀察の元老と会見した。

「   −   そこで今日中し上げます件は、例の停戦協定条項の実施についてですが、

まず第一の遺憾の意表明、ならびに将来に対する保障、これは宋委員長自ら、
すでに天津で済ましてこられましたので、ご了承願います。

また、当の着任者だった二百十九団第三営長金振中、
これは七月十二日付、罷免してしまいました」


「エッ?金振中営長をですか?」
私は覚えず声を挙げてしまった。

身に数創を負いながら、なおかつ毅然として、是は是とし、
非は非とし、一意不拡大の信念に徹底して来た金振中   −。

しかし立場は立場、事件の責任者たる事に間違いはないのだ。
彼の罷免は当然まッ先に採り上げらるべきであったかも知れない。

だが私にいわせれば、師長馮治安の処罰こそ、より以上必要なのではなかったか。

宋哲元の出迎えにさえ行かぬという、それ自体、
すでに自分の心に疚 (や) ましい点があったからだと考えられる。



斉燮元は更に言葉を続けた。

「昨十九日の夜、天津で締結されました細目協定、これは本日から早速手分けして、
全面的の取り締りと弾圧に乗り出す事になりました。

次に部隊の撤退に関してですが……」
彼は中国服の内ポケットから手帳をさぐり出し、パラパラッとページをめくって、

「宋委員長は今日明け方の五時、三十七師の撤退に関して次のような命令を下されました。

一、北京付近に在る三十七師は、本二十日西苑に集結を開始し、

   明二十一日これを完了すべし。

二、右集結中、警戒のため、石友三部隊は一部を八宝山付近に位置せしめ、

   三十七師の集結完了後、翌二十二日これを撤退すべし。


委員長は私がこちらにあがる前、以上は第一段階の措置である。第二段階としては、
さらにこれを永定河の西側に移動させるのだという事も付け加えて申されました」



機関長は
「問題は馮治安が唯々諾々としてこれに従うかどうかですなあ!」

「軍長の命令ですからねえ。いくら馮治安でもこれに楯突くわけにはいかんでしょう。
しぶしぶながらでも動かすだけは動かさなくっちゃ。

それについてですね。撤兵の状況を確認するため、
軍事顧問は明二十一日午前八時、戒厳司令部に来ていただいて、

秦市長と打ち合わせの上、周永業処長、周思靖参謀も同道し、
この撤退に立会っていただきたいと、宋委員長直々のお話なんです。

前線の撤退は、午前十時から十二時ごろまでの間に実行するとの事でした」
「しかし今朝五時の命令というと、宋委員長もお帰り早早なかなかのご勉強ですなあ」

「ハア、委員長はいま、政務や軍務が山積していましてね。
昨夜は報告を聞いたり、会議に顔を出したりで、ほとんど徹宵だったようでした。

委員長は実にハッキリした不拡大主義者ですね。
馮治安なんか、昨夜随分耳の痛くなるようなお説教を聞かされていましたよ」》


つづく
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