関東軍の説得5
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/10/15 18:34 投稿番号: [605 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇
盧溝橋事件』 読売新聞社刊
255〜256p
《 私はその晩、鈴木中将や船引正之高級参謀と、簡単な会食を済ました後、
旅団の全幕僚、並びに酒井機械化兵団の参謀達に対して、
盧溝橋事件勃発の経緯から、二十九軍の配置、特性、将帥の人物論等、
微細に説明した。
一同は、自分達の明日の戦場に関する、生々しい資料ばかりなので、
眼を輝かし、息を凝らして、熱心に私の話を聞いた。
そして各々が発する質問も、ことごとく要所要所を衝き、
真剣そのものの研究振りだった。
「以上申し上げましたような訳で、北京城に対する攻撃、
これは旅団長閣下の責任において、絶対回避していただきたいのです。
また、当旅団の行動正面、即ち北京北方、北苑兵営に駐屯している、
阮玄武の独立歩兵第三十九旅は、事変勃発直後から、
すでに日本側に款 (かん) を通じており、情況切迫の場合には、直ちに日本側に
寝返るという意向を、北京武官今井武夫少佐のところまで申し出ています。
油断は禁物ですが、相当の確実性がありますから、
この点あらかじめお含みおきを願います」
「ホホウ! 日本に寝返る軍隊もありますかなあ!」
「無条件降伏を申し出ています。
また、黄寺 (ホワンスー)、滑河鎮、南口に駐留している、冀北辺区保安隊は、
これまた日本軍との戦闘を極力回避したいと、度々申し込んで来ています」
「その方の指揮官はだれですか?」
「石友三将軍です」
「アア、あの有名な石友三将軍ですか。石友三という名は私も前々から聞いて知っております。
旅団も石友三将軍とブツかるなら、敵にとって決して恥かしくないですね」
「それが今、先方から和平の手を差し伸べて来ているんです」
「承知しました。和平提携、大いに結構です」
「最後にもう一つ、一番大切な事を申し上げます。これは情況最悪の場合、
どうしても城内攻撃を決行しなければならない時の事なんですが、
日本居留民は非常時計画に基いて、ことごとく東交民巷 (トンチャオミンシャン)、
つまり公使館区域に集結させ、ここで籠城する事になっております。
したがって攻撃部隊は、真ッ先に北京城の東便門 (トンビェンメン)、これから
哈達門 (ハーターメン) 方向に進出し、ここから公使館区域に連絡して、
真ッ先に居留民を救出するよう努めていただきたいのです。
このコースは北清事変の際、福島安正将軍が選んだ公使館救援隊の進路でして、
皆さんも戦史で、すでにご研究になった事があると思います」
「これは非常に大切な事だ。実際にこんな事態が起ってきちゃ困るけど、
君達よく図上で研究して、最悪の場合の措置を誤らんよう、準備しておき給え。
そしてわからん事は何でも今の中に寺平君に聞いておき給え」
旅団長はそういって幕僚達に指図した。》
つづく
255〜256p
《 私はその晩、鈴木中将や船引正之高級参謀と、簡単な会食を済ました後、
旅団の全幕僚、並びに酒井機械化兵団の参謀達に対して、
盧溝橋事件勃発の経緯から、二十九軍の配置、特性、将帥の人物論等、
微細に説明した。
一同は、自分達の明日の戦場に関する、生々しい資料ばかりなので、
眼を輝かし、息を凝らして、熱心に私の話を聞いた。
そして各々が発する質問も、ことごとく要所要所を衝き、
真剣そのものの研究振りだった。
「以上申し上げましたような訳で、北京城に対する攻撃、
これは旅団長閣下の責任において、絶対回避していただきたいのです。
また、当旅団の行動正面、即ち北京北方、北苑兵営に駐屯している、
阮玄武の独立歩兵第三十九旅は、事変勃発直後から、
すでに日本側に款 (かん) を通じており、情況切迫の場合には、直ちに日本側に
寝返るという意向を、北京武官今井武夫少佐のところまで申し出ています。
油断は禁物ですが、相当の確実性がありますから、
この点あらかじめお含みおきを願います」
「ホホウ! 日本に寝返る軍隊もありますかなあ!」
「無条件降伏を申し出ています。
また、黄寺 (ホワンスー)、滑河鎮、南口に駐留している、冀北辺区保安隊は、
これまた日本軍との戦闘を極力回避したいと、度々申し込んで来ています」
「その方の指揮官はだれですか?」
「石友三将軍です」
「アア、あの有名な石友三将軍ですか。石友三という名は私も前々から聞いて知っております。
旅団も石友三将軍とブツかるなら、敵にとって決して恥かしくないですね」
「それが今、先方から和平の手を差し伸べて来ているんです」
「承知しました。和平提携、大いに結構です」
「最後にもう一つ、一番大切な事を申し上げます。これは情況最悪の場合、
どうしても城内攻撃を決行しなければならない時の事なんですが、
日本居留民は非常時計画に基いて、ことごとく東交民巷 (トンチャオミンシャン)、
つまり公使館区域に集結させ、ここで籠城する事になっております。
したがって攻撃部隊は、真ッ先に北京城の東便門 (トンビェンメン)、これから
哈達門 (ハーターメン) 方向に進出し、ここから公使館区域に連絡して、
真ッ先に居留民を救出するよう努めていただきたいのです。
このコースは北清事変の際、福島安正将軍が選んだ公使館救援隊の進路でして、
皆さんも戦史で、すでにご研究になった事があると思います」
「これは非常に大切な事だ。実際にこんな事態が起ってきちゃ困るけど、
君達よく図上で研究して、最悪の場合の措置を誤らんよう、準備しておき給え。
そしてわからん事は何でも今の中に寺平君に聞いておき給え」
旅団長はそういって幕僚達に指図した。》
つづく
これは メッセージ 604 (kireigotowadame さん)への返信です.