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王城北京を兵火から護る工作2

投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/10/09 15:41 投稿番号: [595 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇   盧溝橋事件』 読売新聞社刊
242〜243p

《 七月十二日朝、松井特務機関長は機関の主だった職員を一堂に集め
「いつもいう通り、我々は軍の使命という観点から、

あくまで事件の不拡大に徹底しなければならぬ。そこで機関としては本日まで、
心血を注いで停戦交渉に奔走し、昨日、すでに一応の目的は達成することが出来た。

しかしながら、内地の世論、ないし四囲の情勢から判断すると、
はなはだ不吉な予感ではあるが、今後、この不拡大方針を

一擲 (いってき) しなければならぬ事態が起って来ないとも限らない。



純作戦に関する事項は、我々特務機関が容喙 (ようかい) すべき性質のものではない。
しかし、万一北京周辺で戦争発生し、個々の兵団が一番乗りを争って、

無統制に城内攻撃を始めたら、北京一千年の文化はたちまちにして破壊し尽され、
城内百五十万の民衆、就中 (なかんずく) 我が四千の居留民は、

悉 (ことごと) く兵火にさらされなければならぬ。
我々はこのさい、断じて北京城を兵火の巷 (ちまた) に陥れないよう

措置することが肝要であり、これには特務機関自らが主体となって計画し、
また工作を進めなければならんと思う」 と強く望んだ。

これに対し各機関員からも、北京を守ろうとの意見がつぎつぎ述べられた。



とりわけ機関長の通訳を担当していた武田嘱託が西郷隆盛と勝海舟による
江戸城明け渡しの故智にならって努力しようと次のような意見が出された。

「差し当り日本軍に対する説得指導、これは機関長にお願いするとして問題は
中国側に対しては、いったいどんな風に仕向けて行くか。

ちょっと頭に浮かんだだけでも、二十九軍に対する説得工作、
新聞報道機関に対する説得工作、大学教授、学生層に対する説得工作、

その他経済界や一般大衆に対する宣伝工作、
こう数え上げてくるとまだまだ随分いろいろあるでしょうが、

早速文化方面を通じて行なう工作について
一案たてて後程ご検討をお願いいたしましょう」


(工作案の内容とその働きかけは長いので省略します)

つづく

注   一擲   イッテキ    ひとたび投げうつ。   いちどに投げ捨てる。

   容喙   ヨウカイ    口をさしはさむ。
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