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盧溝橋事件71 停戦協定調印

投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/09/24 18:26 投稿番号: [578 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇   盧溝橋事件』 読売新聞社刊
223〜224p

《 やがて今井武官が面をあげ 「やはり私は動員が出来得る態勢にある、
という意味にとりたいのですが……」

すると松井機関長も 「私もその解釈が妥当だと思う。
かりに刀を抜いても、血を見る事なく鞘に収める事が出来たら、

これに越した事はないのだからね。
同様に、動員したら必ず戦争しなければならぬという理屈もない筈だ。

ともかく、我々はその判断に基いて、協定の調印だけは断然決行しようじゃないか」
「そうですな」 「もし……」 「もし?」

「我が政府が他に理由なくして動員を強行し、強引に華北派兵を断行するようだったら、
我々は潔く責を負って職を擲 (なげう) つばかりだ」



「そうなればもちろん、私も……」
二人は悲壮な面持で決心の臍 (ほぞ) を固めた。

松井機関長は午後五時五十分、和知参謀、今井武官同道、張允栄を訪問した。
そして張自忠と連名の下に、次の停戦条文に調印させた。



    停   戦   条   文

一、第二十九軍代表   対於   日本軍表示   遺憾之意   並   懲罰責任者   以及声明

   将来負責防止   再惹起   比類事件

二、中国軍   為   日本在豊台駐軍   避免過於接近   易於惹起事端起見   不駐軍

   於盧溝橋城廓   及   竜王廟   以保安隊   維持其治安

三、本事件   認為多胚胎於   所謂   藍衣社   共産党   其他抗日系   各種団体之指導

   故此将来対   之講究対策   並徹底取締

   以上所提各項   均承諾之

    中華民国二十六年七月十一日

    第二十九軍代表    張   自   忠    押

    第二十九軍代表    張   允   栄    押



病中の張自忠は、ベッドから起き上って来て署名調印し、それが終ると、
松井機関長、今井武官、和知参謀等と堅く握手を交した。

調停委員が条文に調印を終ったのは、七月十一日の午後八時だった。
もちろんこれで日華抗争のすべてが解決したというわけにはいかない。

ただ単に、盧溝橋付近における軍事行動に、一応妥協のけじめがついた
という程度にしか過ぎないが、しかし事件が勃発以来丸四日間、

文字通りの不眠不休、不拡大に徹して工作を続けて来た人々は、
これでようやく安堵の胸を撫でおろす事が出来、

機関の中にも久々ぶりに、明るい笑い声がさざめいたのであった。》


つづく
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