盧溝橋事件59 橋本参謀長を出迎え3
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/09/08 18:32 投稿番号: [562 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇
盧溝橋事件』 読売新聞社刊
(このあと参謀長は戦死者の慰霊や、負傷者の見舞いをするが、その箇所省略)
213〜215p
《 やがて車は守備隊の正門を出発した。参謀長一行は停戦協定を結ぶため
北京へ向う途中、盧溝橋付近の戦場を視察することになったのである。
(途中省略)
河辺旅団長、牟田口連隊長、一木大隊長等はその時皆、ホームのところに
集って、参謀長の到着を待ち受けていた。
「ヤア!」「ヤア!」
参謀長と河辺将軍、言葉は簡単ながら感慨深げな挨拶を交した。
「とうとう余儀ない情況の下に、衝突を起してしまいましてなあ。
大変ご心配をおかけ致しました」
「イヤイヤ、どう致しまして、非常なご奮闘で本当にお疲れでございました。
ことに犠牲者を出されました事について、衷心ご同情申し上げます」
「有難う。牟田口君や、それから一木大隊長が実によくやってくれました。
中国側に対しては、これで十分精神的打撃を与え得たことと思います。
ただ、多数の犠牲者を出した事が非常に残念です。
今日はもう、戦場も大分鎮静に赴いたようですから、一部をあの一文字山付近に残し、
主力は一応豊台に引き揚げるよう命令しました」
「じゃあいまから、直接、戦闘を指揮した牟田口連隊長と一木大隊長から、
戦況の概要を聞いていただきましょう」
そこで牟田口大佐と一木少佐とは、代る代る鞭を振り振り、事件発端の経緯から
戦闘経過を、現地についてつぶさに説明した。二人の説明はかれこれ三十分ばかりかかった。
その一言一句には、今日はまた格別力が籠っていて、当時の戦況が彷彿 (ほうふつ)
として私達の眼前に描き出されて来るのだった。
最後に一木大隊長 「私の戦闘指揮が当を得ませんでしたため、
多数の死傷者を生じました事は、誠におわびの申し様がございません……」
そこまで語り来った大隊長は、そのままバッタリ言葉が途切れてしまった。
隊長の脳裏には、この時、昨日来の情景がマザマザと映じて来て、
かれを思いこれを想い、うたた断腸の念にたえなかったに違いない。
参謀長も、旅団長も、そしてなみいる将校一同も、ことごとく暗然として涙をのんだ。
夕靄立ちこめる盧溝橋の原、これが昨日の激戦の跡とは思われないばかりに、
あたりはシーンと静まり返っている。
遥か埋防の方には、竜王廟の赤褐色の塀がボンヤリと霧雨の中に煙っている。
「じゃ、私は今からまだ仕事がありますから、これで失礼いたします
諸官のご健闘を祈っております」
参謀長は一同に挨拶した。そして旅団長等に見送られながら、自動車の方へ歩を運んだ。
その時、宛平城の空を、鴉 (からす) の群が北へ北へと飛んでいった。
車は北京街道を東へ走った。
参謀長の車が北京市内の宿舎に入ったのは午後八時三十分であった。》
続く
これは メッセージ 561 (kireigotowadame さん)への返信です.
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