盧溝橋事件31 桜井顧問射撃を制止する
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/07/26 18:21 投稿番号: [518 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇
盧溝橋事件』 読売新聞社刊
140〜141p
《 日華両軍が交戦状態に入ると同時に、宛平城内では営長金振中のところへ、
各方面からの報告が次から次へと輻輳 (ふくそう) して来た。
ちょうど私が特務機関に電話連絡している間に、桜井顧問は
「いつまでもこんなところでぐずぐずしていたって射撃は止みやせん!
オイ、営長!
僕と一緒に城壁に上ろう!
そして白旗を振りながら両軍の射撃を止めさせるんだ!」
早くも部屋の片隅にあった寝台の敷布をはがしてしまった。敷布は長さ三メートル
ほどの竹ざおに結びつけられ、軍使を標榜する大きな白旗に早変りした。
金営長と桜井顧問、斉藤秘書等は県政府を出ると東門城壁上に登って行った。
東門の扉は完全に閉鎖され、土嚢が七分通りまで積み上げられていたが、
中国兵はなお、土嚢を運んだり、円匙 (えんぴ) で土をホジくったりしていた。
東門の上から一文字山の方を眺めると、台上にはまばらにしか日本兵の姿は認められ
ない。大きな部隊はもういないらしく、戦線は大分西の方に移動して行っている。
営長は東門守備の兵に、「射ってはいかんぞ!
今日のはみんな誤解からだ。
射ってはいかん、射ってはいかん!」 と注意を与えていた。
一行は城の東北角から更に転じて西の方へ進んで行った。
パーン!
突然、すぐ眼の前で小銃を発射した音が鼓膜をつんざいた。
「営長!
いま射ったのはそこにいるその兵だ!
止めさせろ止めさせろ!
この城内から日本軍に向って射撃したが最後、日本軍は怒って城内に向って
攻撃して来るぞ!
そしたら城内沢山の住民の命は、
いったいどうなってしまうんだ!」 桜井顧問がどなりつけた。
金振中はバタバタッと走った。そして今射撃したばかりの兵の肩を小突いて、
またもや、「射ってはいかん!射ってはいかん!」 を繰り返した。
兵は不満そうな顔付きをしながら、しぶしぶ銃をおろした。
「射撃を止めさせただけじゃいかん!
宛平城からは絶対射撃をしていないという
証拠を示すために、到るところ、こういう白旗を掲げさせるんだ。
営長!
すぐ命じて白旗をあげさせろ!」
兵は、金振中の命令によって、ポケットから汗でしわくちゃになったハンカチや
手拭を取り出した。それを有り合せの棒切れに縛りつけて城壁の上に押し立てた。
「俺が命令を下さぬ限り、お前達は絶対、射撃してはいかんぞッ!
いいか!
命令をきかんやつは厳重処分するッ!」
金振中はどなり続けた。
・・・
−
桜井顧問は血眼になって、中国兵の一挙一動を監視した。
「ホラ!営長!
いま、あそこの重機関銃が装填したぞ!
あの弾を抜かせろッ!
県政府の空地にいるあの迫撃砲には、まだなにも射撃中止を命じてないじゃないか。
駄目だ。早く行って命令を伝えなくっちゃ!」》
つづく
これは メッセージ 517 (kireigotowadame さん)への返信です.
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