盧溝橋事件23 軍使ら一文字山着
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/07/18 16:04 投稿番号: [510 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇
盧溝橋事件』 読売新聞社刊
115〜116p
《 軍使一行をのせた数台の自動車は、黎明の北京街道を疾駆していた。
視界は明るさを増してきて、自動車の通った後には砂塵が淡く低く巻き起っていた。
午前四時三十分、車は一文字山の南側、長豊支線と北京街道のクロス点付近で停まった。
「なるほどなあ、一木大隊は全部この辺に集結してるんだなあ」 まず森田中佐が嘆声をあげた。
見ると一文字山の稜線上には、兵隊の姿が影絵のようにうごめいている。
私達はここで車を下りた。中国側と交渉を始めるに先立って、
一応現地指揮官とも打合せをし、全般の情況を頭の中にたたみ込んでおく事が
必要だと思ったからである。
・・・
私は先頭に立って歩き続け、ようやく稜線上に達した。
・・・私はさらに左の方に眼を転じて見た。
前方一キロ、そこに横わっているのが宛平城の大城壁である。・・・その城壁上を、
点々蟻のように動いているのは、灰色の軍服をまとった二十九軍の正規兵であった。
肉眼でさえそれがハッキリ見わけられるのだ。いるいる。
彼等も朝早くから一生懸命働きおるわい!
そう思ったとたん、突然足元でガサガサッと音がした。叢 (くさむら) の陰に、
軽機関銃の一ケ分隊がピタリと伏せをして待機しでいるのだった。私は分隊長にたずねた。
「大隊本部はどの辺にあるのか」 すると分隊長は起き上って来て、北の方を指さしながら
「大隊本部はこの台をズッと向うに行った、一番北はずれの堆土 (たいど) 付近にあります。
タッタいまし方、大隊長殿は各中隊長を集めてなにやら命令を与えておられました」
と教えてくれた。
私はうしろをふり返って
「森田中佐殿!
大隊本部はこれからまだ、大分前の方に出ているようです」
私はまたその方に歩きはじめた。その時、はるか前方、稜線上から
「攻
−
撃
−
前
−
進!」
きれを裂くような号令がかすかに聞えて来た。
それに応じてあちらの窪地からも、こちらの叢からも
「第何分隊前へ!」
の号令が起って、疎開した分隊が鼠の這うような格好で前進を始めた。
まるで野営演習を眺めているみたいな格好である。
だがよく見ていると、大隊の攻撃正面がどうもおかしい。
部隊はことごとく竜王廟の方向に向って躍進を起しているではないか。
私は立ち停まり、森田中佐にいった。
「中佐殿、これはいったいどういう意味なんです?
攻撃するなら攻撃するで、
宛平城に向って前進しそうなものを。
ほら、あの城壁上にはあんなに沢山中国兵がいるんですよ。それを放っておいて、
いやそれに側面を曝露しながら、敵前で分列式をやってるみたいな格好で竜王廟を
攻撃するなんて。私にはどうもわけがわからんです」》
つづく
これは メッセージ 509 (kireigotowadame さん)への返信です.
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