盧溝橋事件21 桜井顧問による中国側の意見
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/07/16 18:28 投稿番号: [508 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇
盧溝橋事件』 読売新聞社刊
111p
《 ところが先方の言葉として、馮治安の部下、つまり三十七師は宛平城内には
確かに駐屯しているが、城外には一兵だって配置しておらん、とこういうんです」
「そんな事は絶対ありません。現に昨晩なんか‥…・」
「ま、ま、ちょっと私の話を聞いて下さい。それでもし城外で銃声がしたというのなら、
それは二十九軍の兵じゃなくて匪賊かも知れん、便衣隊の仕業かも知れん。
あるいはまた、この付近には水瓜畑が沢山あるから、
その番人が日本軍の斥候を水瓜泥棒と間違えて、
それで威嚇の目的で射撃したのかもわからない、とこういっとるんです」
「そんな馬鹿げた事は絶対ありません。現に昨日の夕方、中国兵が竜王廟一帯の
堤防上に、陣地を占領していた事は、私がこの眼でハッキリ見たんですからね」
「まあ待って下さい。それからですなあ、まだこんな事もいっとるです。
もしかしたらあるいはそれが二十九軍の兵であったかも知れない。いいですか。
しかしそうだとしたら、それは上司の命令をきかないワカラズヤどもだから、
これを要するに城外にいるやつに対しては、
その二十九軍たるとなんたるとを問わず、日本軍が攻撃しようと討伐しようと、
一切日本側のご自由にお委せする、とこういうんです」
「へえ!」
「そこで私の意見を申し上げますとねえ。
いま、宛平城内には二十九軍以外に一般民衆も沢山住んでいる事ですから、
どうかこの城だけは絶対攻撃しないようにして下さい」
「承知しました。
じゃあ大隊は宛平城に対しては、絶対に銃先 (つつさき) を向けません。
その代り城外にいる、匪賊か便衣隊か水瓜泥棒か、わけのわからん二十九軍に
対しては、断然攻撃を開始しますからお含みおきを願います」
「そうして下さい。お頼みしときます。じゃあ私はいまから宛平城内に入って
中国軍の指揮官に会ってきます。
そして城内にいる中国兵は絶対戦闘に参加しないよう指導してきます」
顧問はそこで自動車に乗った。
一木大隊長も馬にまたがった。二人は西と北とに別れて行った。》
・・・
112 p
《 長豊支線のガード下を通り抜けた桜井顧問の車は、やがて宛平城の東側、
順治門に到着した。城門の外では宛平県保安大隊の孫天璞 (そんてんぼく)、
同じく県警察局の干振華 (かんしんか) 等が、部下を堵列 (とれつ) させて一行を
出迎えた。北京から軍使が行くという事をあらかじめ電話連絡で知らされていたからである。
「オイ! 城内の治安情況は今どんなふうか」 隊長はカチリ、かかとを引きつけて
「ハイ、極めて平静であります。平常となんら変った事はありません」
「城外の様子はどうだ〜 いま、二十九軍の兵は竜王廟の方に出ているのかいないのか」
「ハイ、城外には一兵も出ておりません」
顧問は秘書斉藤の方を振り返って 「オイ! この事は一刻も早く一木大隊長に
通報しておかなきゃいかん!お前ちょっと連絡に行って来い。
そこの巡警から自転車を借りてすっ飛ばしたら一息だ。大急ぎで行って来てくれ」
そう言い残すと周永業と一緒に、サッサと城内に入って行ってしまった。》
つづく
111p
《 ところが先方の言葉として、馮治安の部下、つまり三十七師は宛平城内には
確かに駐屯しているが、城外には一兵だって配置しておらん、とこういうんです」
「そんな事は絶対ありません。現に昨晩なんか‥…・」
「ま、ま、ちょっと私の話を聞いて下さい。それでもし城外で銃声がしたというのなら、
それは二十九軍の兵じゃなくて匪賊かも知れん、便衣隊の仕業かも知れん。
あるいはまた、この付近には水瓜畑が沢山あるから、
その番人が日本軍の斥候を水瓜泥棒と間違えて、
それで威嚇の目的で射撃したのかもわからない、とこういっとるんです」
「そんな馬鹿げた事は絶対ありません。現に昨日の夕方、中国兵が竜王廟一帯の
堤防上に、陣地を占領していた事は、私がこの眼でハッキリ見たんですからね」
「まあ待って下さい。それからですなあ、まだこんな事もいっとるです。
もしかしたらあるいはそれが二十九軍の兵であったかも知れない。いいですか。
しかしそうだとしたら、それは上司の命令をきかないワカラズヤどもだから、
これを要するに城外にいるやつに対しては、
その二十九軍たるとなんたるとを問わず、日本軍が攻撃しようと討伐しようと、
一切日本側のご自由にお委せする、とこういうんです」
「へえ!」
「そこで私の意見を申し上げますとねえ。
いま、宛平城内には二十九軍以外に一般民衆も沢山住んでいる事ですから、
どうかこの城だけは絶対攻撃しないようにして下さい」
「承知しました。
じゃあ大隊は宛平城に対しては、絶対に銃先 (つつさき) を向けません。
その代り城外にいる、匪賊か便衣隊か水瓜泥棒か、わけのわからん二十九軍に
対しては、断然攻撃を開始しますからお含みおきを願います」
「そうして下さい。お頼みしときます。じゃあ私はいまから宛平城内に入って
中国軍の指揮官に会ってきます。
そして城内にいる中国兵は絶対戦闘に参加しないよう指導してきます」
顧問はそこで自動車に乗った。
一木大隊長も馬にまたがった。二人は西と北とに別れて行った。》
・・・
112 p
《 長豊支線のガード下を通り抜けた桜井顧問の車は、やがて宛平城の東側、
順治門に到着した。城門の外では宛平県保安大隊の孫天璞 (そんてんぼく)、
同じく県警察局の干振華 (かんしんか) 等が、部下を堵列 (とれつ) させて一行を
出迎えた。北京から軍使が行くという事をあらかじめ電話連絡で知らされていたからである。
「オイ! 城内の治安情況は今どんなふうか」 隊長はカチリ、かかとを引きつけて
「ハイ、極めて平静であります。平常となんら変った事はありません」
「城外の様子はどうだ〜 いま、二十九軍の兵は竜王廟の方に出ているのかいないのか」
「ハイ、城外には一兵も出ておりません」
顧問は秘書斉藤の方を振り返って 「オイ! この事は一刻も早く一木大隊長に
通報しておかなきゃいかん!お前ちょっと連絡に行って来い。
そこの巡警から自転車を借りてすっ飛ばしたら一息だ。大急ぎで行って来てくれ」
そう言い残すと周永業と一緒に、サッサと城内に入って行ってしまった。》
つづく
これは メッセージ 507 (kireigotowadame さん)への返信です.