盧溝橋事件14 不明の兵戻るの報告入る
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/07/06 18:36 投稿番号: [498 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇
盧溝橋事件』 読売新聞社刊
93〜94p
《 その時午前二時をちょっと過ぎていた。顧問服の桜井少佐が、同じく軍事顧問部の
斉藤弼州秘書を連れて、アタフタと玄関の方に駆け出して行く。
「桜井顧問殿、どちらかお出かけですか?
行く先を明らかにして置いて下さい」
私は追いすがるようにして顧問にたずねた。
「僕ちょっと馮治安のところへ行って来ます。
馮治安に会って、彼を遣り込めようと思うんです」
桜井顧問の頑丈な身体が、自動車の中に吸い込まれて行った。
「補佐官殿!お電話です。旅団の小野口副官からかかっています」
私はふたたび引き返して電話にかかった。
「寺平君ですか!さっきのあれ、とうとう出て来たそうです。ホラ!
アノ、
例の行方不明の兵隊がですね!
したがってこちらには何ら損害はなかった事になります。
しかし演習中の日本軍に対して不法射撃をしかけてきたという事は、
これは重大な侮辱行為ですからあくまで糾弾しなければなりません。
そこでいま、連隊長とも相談したんですが、最小限度の解決条件として、
次の二項目を中国側に要求したいんです。
その一つは、中国軍の師長馮治安自らこちらに出て来て謝罪する事。
第二は盧溝橋に駐屯している二百十九団第三営の即時撤退。どうです。
このくらいの要求は決して無理じゃないでしょう。
これについて松井機関長のご意見をうかがってみて下さい」
その時、機関長は補佐官室のソファーにもたれて、しきりに盧溝橋の地図を
研究している最中だったが、私の報告を聞き終ると
「フーム、そいつはちょっと具合が悪いなあ、ヨシ、僕が直接電話で話そう」
そういって自ら電話に出た。
「やあ小野口君、今のお話、第一項の馮治安の謝罪というやつだなあ、
こりやまあ要求してもよかろうと思うんだ。
しかし第二項の中国軍の即時撤退、こいつは少々薬が利き過ぎやせんかな。
あまりこいつを強く押して出ると、先方の感情を刺激する結果、
いろんな反動が現われてきて、かえって日本側が自ら、
天に向って唾をはくような結果にならないとも限らんからなあ」
「機関長殿のご意見としては、第二項は撤回した方がいいと……」
「撤回せよと断定的にいうわけじゃない。
こういうデリケートな問題は極めて慎重を要するので、
一応、軍司令部とも打ち合せた上、軍の方針が決まってから、
改めて中国側に要求した方が妥当だと思うんだ」
「わかりました。じやあその事を連隊長殿に申し上げます」
つづく
これは メッセージ 497 (kireigotowadame さん)への返信です.
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