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盧溝橋事件3 岩谷曹長を大隊へ急報に

投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/06/25 18:33 投稿番号: [487 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇   盧溝橋事件』 読売新聞社刊
66〜67p


《 こういう事態に直面した場合、指揮官たる者の判断、処置が、
極めて慎重を要することはいうまでもない。

ことに天津軍というものの特殊な立場から考えて行くと、それは単に戦術的判断だけで
押し進めて行くわけには行かない、微妙さ、複雑さが介在していたのである。

すなわち当面の敵、二十九軍は、現在日本側からは、顧問まで送って友好関係を
結んでいる特殊の部隊である。

日本がたとえ、ソ連や他の中国軍相手に、衝突を起すような事があったとしても、
二十九軍とだけは決して戦うべきでない。これが軍の根本方針だったはずだ。

いま、当面の敵に対し、膺懲の一弾を放つことは容易である。
しかし、そうすると、この軍の重大方針を根本的にブチこわしてしまう事になる。


さればとて、それをおそれて黙然、何等対処しないという事になれば、
国軍の威信は地に墜ちてしまう事にもなる。

中隊長の頭はここに、超スピードの回転を始め、
また深刻な苦慮に陥った事は否めない。

−   だが待てよ。我々はいま、かりそめにも中国側の陥穿にひっかかって、
軽々しく応戦の火蓋を切るような事があってはならぬ。

今後いかなる行動をとるにもせよ、
この情況を取あえず大隊長に報告することが、何よりの急務だ。   −


そう気がつくと、中隊長は直ちに岩谷曹長を手元に呼んだ。

「曹長は今から兵一名を連れ、直ちに大隊長殿のところに行って、
この情況を報告してこい。大至急だぞ。

俺が乗って来た馬と野地少尉の馬を利用せい。途中十分気をつけて行けよ。
一文字山には事によると、中国兵が出ているかもわからんからな」》


70〜71p
《岩谷曹長と伝令とは、一文字山付近の危険地帯を通り抜け、北京街道を
突っ切ってしまうと、それから後はまっしぐらに豊台の兵営めがけて馬をとばせた。

道の両側には楊柳がこんもりと生い繁り、くねくね曲った凹道ではあったけれど、
いままで演習の往復に、もう何十遍となく通いなれた道なので、人も馬も、

昼間の道を歩くのと同じ調子で、ドンドン歩度を伸ばして進んだ。》


つづく
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