盧溝橋事件2 初年兵行方不明
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/06/24 18:37 投稿番号: [486 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇
盧溝橋事件』 読売新聞社刊
65〜66p
《 二名の喇叭手は調子を合せて吹奏し始めた。
「気を付け、止まれ、集合!」の喇叭の音は、嫋々 (じょうじょう) たる
余韻を残して、広野の彼方に震えるように消えて行った。
「アッ!
中隊長殿!
懐中電燈の信号が見えますッ!
竜王廟と鉄橋の中間です。
あの光は、確かに中国兵の信号に間違いありません」
岩谷曹長がそう言いながら、二、三歩中隊長の方に歩み寄って来たとたん
パンパンパンパーン!
パンパーン!
またもや連続、十数発の激しい銃声が耳朶 (じだ) をつんざいて、
ピュッ、ピュッ、ピューッ!
おびただしい弾丸が頭上をかすめた。
発射位置がトーチカの直ぐ南側、堤防上からであることは、
今度は全員でこれを確認する事が出来た。
初めの射撃がこちらの軽機射撃の閃光を目標としており、
後の射撃が喇叭の号音目当てであった事はほぼうなずける。
「伏せッ!」
「小隊長は直ちに人員を点検!」
中隊長は欠継ぎ早にこうどなった。
低い声で
「一、二、三、四……」 番号が次から次に称えられて行く。
ややしばらくして
「第二小隊、人員異状ありません!」
「指揮班、人員その他異状ありません!」
「第三小隊、異状ありません!」
だんだん報告が集まって来た。しかし第一小隊だけはなかなか報告がこなかった。
「野地少尉!
第一小隊はまだ点検終らんのか?」
「今、調べておりますが、一名、どうも足らんようであります」
少尉はそう答えて、再び分隊長の方をふり返った。
「その足りない兵と云うのは、いったいだれなんだ?」
「ハ、志村菊次郎であります」
「すると志村は何だな。さっき伝令に出されてから、まだ帰って来ないというわけだな。
おれのところへもまだ全然、復命には来ていないんだが……」
・・・・
三浦准尉は
「そうですか。あの兵はあれから直ぐ、一文字山の方に引返して行ったと
思ったんですがなあ!」 と、これまた、深く考え込んでしまった。
中隊長は腕をこまぬいたまま、ジーッとそれらの話を聞いていたが 「とにかく、
各小隊は全部そこの窪地に遮蔽徹しろ!
台上に集合しておってはかえって危険だ」
と、とりあえず中隊全員を、少し下った窪地の方に移動させた。
つづく
これは メッセージ 485 (kireigotowadame さん)への返信です.
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