盧溝橋事件1 清水中隊銃撃さる。
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/06/23 18:22 投稿番号: [485 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇
盧溝橋事件』 読売新聞社刊
61p
《 三浦准尉が傍 (かたわら) の岩谷曹長の肘 (ひじ) をつついた。
そしてヒソヒソ話し始めた。
「おい、さっきの堤防上のあの中国兵なあ、
あいつらまだどこへも引き揚げて行かんようだなあ!」
「そうです。一晩中ああやって警戒を続けるつもりなんですかなあ!」
「まさかおれ達を警戒しているわけじゃあるまいな」
「さあ!
そいつは……」》
64〜65p
《 中隊長は夜光時計をすかして眺めた。十時三十分をやや回っている。
「さあ、今晩はこれからまだ、露営の支度にかからなきゃならん。
前半夜の演習はもうこの辺で打切ることとしよう」
そう独語しながら工事線のほぼ中央、中隊指揮班の位置に戻って行った。
小高い堆土の上に立った中隊長は、背後をふり返って静かに、
「伝令集合!」 と小声で呼びかけた。
「今夜の演習はこれで終了する。伝令は各小隊長、ならびに仮設敵司令に、
直ちに演習を終ってこの位置に集合するよう、それぞれ伝達せよ。直ちに出発!」
中隊長が一声どなりさえすれば、中隊全部にはすぐにも徹底出来得る距離である。
しかし清水中隊長は、こうした場合にも、
なおかつ隠密、静粛に行動するための訓練を忘れなかった。
伝令はいずれも今の命令を伝達すべく、各々の任務に向って散って行った。
やがて右小隊、つづいて左小隊方面が、次第次第にザワめき始めてきた。
突如!
仮設敵の陣地でにわかに激しい軽機関銃声が捲き起った。
五十メートル間隔の二挺の軽機が一斉に火を吹き始めたのだ。
「演習終りだというのに、何だって今ごろ射撃なんか始めたりしてるんだ!」
「伝令が仮設敵の方にとんでったもんだから、
多分、それを敵襲と勘違いしてブッ放したんだろう!」
兵は突っ立ったまま、一斉にこの三発点射の閃光に目を向けていた。
射撃は二挺で、合計三、四十発程度のものだったが、
ちょうどこの時、今度はこれに対応して真背後の方向、竜王廟の南側、
トーチカ付近と覚しい堤防上から、にわかにパンパンパーンという銃声が聞えてきた。
−
オヤッ?
今度の銃声は何だ!
−
全員一斉にこの方に聞き耳をそば立てた。
「中隊長殿、今のは実弾じゃありませんか?」
一番最初にそう叫んだのは三浦准尉だった。
「ウム、そうらしいな。頭の上で、ピューッていう飛行音が聞えたぞ」
「そうです。確かに飛行音が聞えました。高さはかなり高いようでしたが」
「さてはさっき、堤防上にいたあの中国兵達がブッ放したんだな」
「おい喇叭 (ラッパ) 手、直ぐ集合喇叭を吹け」
「ハッ!
集合喇叭を吹きます」
つづく
これは メッセージ 484 (kireigotowadame さん)への返信です.
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