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1939年6月 ノモンハン11 また攻撃される

投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2012/11/16 18:56 投稿番号: [2054 / 2250]
辻正信著   「ノモンハン秘史」   毎日ワンズ
128〜130p


《 愚にもつかぬ砂漠の一隅で、これ以上血を流すべきではない。

むしろ主力の対峙する東部正面と、危機を孕む北部正面との作戦準備を強化しなければならぬ。

ノモンハンの僻地   (へきち)   で事を起こしたのは、シナ戦線の作戦を牽制するソ連の謀略である。



彼にして真に本格的侵略を考えているとせば、

ノモンハンに我が兵力をできるだけ吸収した後に、東または北正面から攻勢を取るであろう。

北正面では、第四軍司令部が編成されたばかりであり、

その方向を与えるために六月中旬、植田軍司令官に矢野参謀副長、

寺田、服部、村沢、辻の各参謀が随行して、孫呉   (そんご)   に出張した。

第四軍司令官中島中将の情況報告が終わり、軍司令官統裁の兵棋演習を検閲した後、

植田将軍は一部の随員と共に北安   (ほくあん)   に、

幕僚主力は黒河方面の国境守備隊を視察して、十八日、新京に帰った。



当時天津においては、日英会談が進行中であり、

現地軍が相当強硬態度で租界   (*イギリス)   封鎖を強行しているニュースがあった。



シナ事変の処理、欧州情勢の緊迫など内外多端の折柄、

ノモンハン方面で兵力を牽制されることは好ましくない。

「適当に、できることなら頬被りして相手にすまい」   と考えながら、

別にハイラル方面に増兵する考えもなく、

むしろ何とかしてシナ事変の解決に関東軍として策応すべき方策は

ないものかと思案しているとき、



現地からの報告は、 「外蒙及びソ連軍に何ら慎重な態度が見えず、

大規模に兵力を増強し、戦備を強化しているらしい」   というものだった。

明らかにシナ事変を牽制するための政略的意図を持っているにちがいない。

計画的侵犯の兆候はますます濃化してきた。



六月十九日朝、小松原師団長から軍機電報が来た。その内容は、

一、ノモンハン方面の敵は逐次兵力を増強し、有力なる戦車を伴う敵は、

   昨朝満軍を蹂躙駆逐せり。

二、約十五機の敵爆撃機は昨日温泉方面を攻撃し、人馬に相当の損害を与えたり。

三、約三十機の敵爆撃機は、同日朝カンヂュル廟附近を攻撃し、

   同地に集積しありしガソリン五百缶を焼却せり。



事態はまさに容易ではない。

従来相互に空中越境したものの、それはいずれも単機偵察の範囲を出でなかった。

にもかかわらず、大編隊の爆撃機を以て、深く国境を越え、

カンヂュル廟と温泉に盲爆を加えるとは、本格的挑戦であると断ぜざるを得ない。



このまま見逃せば、ハイラルやチチハルを爆撃するであろう。

左の頬をたたかれて、さらに右頬をたたかすか、

あるいは断乎として敵の出鼻を挫き、白熊の巨手を引っ込めさすかの判断に迷った。》



つづく
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