1939年 土肥原機関に来た二人の真意
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2012/08/25 14:42 投稿番号: [1854 / 2250]
晴気慶胤著
『上海テロ工作76号』
毎日新聞社
34〜35p
《 丁黙邨は蛇のような眼を光らせながら語りつづける。
「藍衣社の特工は、中国の土地で中国流の組織を持って、
その道に熟練した中国人が命がけになって実行している地下組織です。
それを特工には何らの経験も持たぬ日本の軍警が取り締まろうとするのは
喜劇です。
藍衣社に打ち勝つものは、
敵にまさる組織と人材をもった中国人の特工でしかありません」
「丁さん。ちょっと待ってください。中国ではなぜ特工が発達したのでしょう」
私の質問に対して、彼はこう答えた。
「中国では心から法律を尊び、すすんで法律に従うといった政治的な訓練が
不十分なのです。だから政治や経済の指導もうわべからだけでは
今日の中国を治めることはできません。
どうしても裏面から監督指導することが必要なのです。
国民党の政治が民衆に徹底しはじめたのは、
藍衣社やC・C団などの地下組織が活動するようになってからです。
維新政府が発展しないのは、敵の特工から攻撃されるだけで、
それに対抗できる組織を持っていないところによるところが大きいのです。
要するに特工は、当分の間は中国の政治からなくすることはできません。
中国共産党は、現在のところ上海ではまだ大した力を持っていませんが、
その特工は国民党の大敵です。
共産党が中国を支配するようになったら、
中国の民衆は国民党と共産党の二つの特工に挟撃されて、
今日以上のたいへんな苦しみにあうでしょう」
時刻はいつしか午後一時を過ぎていた。
李士群は腕時計を示して丁黙邨に何かささやいた。
丁黙邨はうなずいて、やがて姿勢を正して土肥原中将にいった。
「思わず長座いたしまして、失礼申し上げました。
そろそろおいとまさせて頂きたいと思いますが、最後にお願いがございます。
私たちはさきほど申し上げましたように上海で救国運動を起こしたいと
思っていますが、それにはまず敵の特工と戦わねばなりません。
蛇の道は蛇です。
幸い敵の力も弱点も承知していますから、必ず打ち勝てると思います。
つきましてはこの運動は、決して抗日が目的でないことを
ご了解いただきたいと存じます。
また、できればこの運動にご指導と援助を賜わりたいとお願いします」
やっと長い会談を打ち切った丁黙邨は、ここでようやく重光堂を訪ねた目的を打ち明けた。
その口調は、とかくぎこちなく、よそよそしかったはじめとは打って変わって、
ちょうど先輩に甘えて物をねだる後輩のような
丁重なうちにも親しみが満ち溢れていた。》
つづく
これは メッセージ 1852 (kir**gotowa**me さん)への返信です.
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