紫陽花亭日乗

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提婆達多 ⑬

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/07/14 23:56 投稿番号: [91 / 735]
さて沙門の姿となったシッタルタは、苛酷な苦行を己に課しながら師を求め
修行の旅を続けた。
どこに行ってもシッタルタを満足させる師はいなかった。

ネランジャラ河畔の樹林に入り、煩悩消滅のため、
断食とおのが肉体を痛めつける苦行を続けた。
シッタルタはすでに骸骨かとみまごうほどにやせさらばえ、
立って歩くことさえままならぬ衰弱のきわみにあり、遂に地面に昏倒した。
それを見ていた仲間の修行者たちは、「彼はとうとう死んだ」と思った。

が間もなくシッタルタは息を吹きかえし、苦行の無益であることを悟る。
いたずらに身を苦しめれば心はいよいよ悩乱する。
苦楽はふたつながら涅槃の因ではない。
また、死んでしまってはなにもならないではないか。

シッタルタはネランジャラ河に入り沐浴をし、
木の枝にすがりかろうじて陸地にあがった。
そのとき一人の村娘がシッタルタにミルク粥を供養した。
シッタルタは、有り難くこの飲食(オンジキ)の楽をうけた。
これによりいささかの気力と体力を取り戻した。

この村娘の名を、チュダリヤ=チュダータ(スジャータ)という。
乳製品会社の「スジャータ」の名はここに由来する。

仲間の修行者たちはこの一部始終を見て、シッタルタは退転し苦行を捨てた
と思いこみ、シッタルタを見限って、遠く西の方へ去って行ってしまった。

たった一人とり残されたシッタルタは、一本のピッパラの大木を見つけ、
その下に結跏趺坐して長い長い瞑想に入った。


懐かしい故郷、
カピラバストゥーの人々が入れ替わりたちかわり眼前にあらわれた。

父が、生みの母の妹にしてシュットーダナ王の後妻となった継母が、
ラーフラがあらわれ、城にもどるようにと涙ながらに懇願した。

それらの人たちの姿が消えると、かわってヤショダラがあらわれ、
艶然と微笑み腰をくねらせ男を誘うしぐさをした。

暴風雨が起こり、天地晦冥にして冷風と疾雨が七日の間続き、
シッタルタを痛めつけた。
雷も鳴った。悪魔が姿をあらわしあたりを火の海にした。

父も継母もラーフラもヤショダラの出現も、すべてはシッタルタの大悟を
阻もうとする悪魔が見せた幻影であった。

悪魔は誘惑をした。
「ただちに修行をやめれば、ありとあらゆるこの世の栄耀栄華を
あたえるであろう」と。

一説に、そのとき竜王があらわれ大いなる蛇身をもって、
シッタルタの身を七重に巻き、七頭をもってシッタルタの頭上を蔽い
悪魔から守ったのだという。


つづく

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