紫陽花亭日乗

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Re: 『蕭蕭』     沈従文

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/10/16 00:50 投稿番号: [664 / 735]
瓜の取り入れの頃には、秋はもう来ている。
庭の到る処に、家の裏の林の樹木の紅や黄色の大きな葉が、
風に吹かれて飛んでくる。
蕭蕭は瓜のそばにでんと立ち、手にひと束の木の葉をとり、
幼夫のために小さな小さなすげ笠を編んで遊んでやる。

雇い人の中に花狗(ホアゴウ)という名の男がいた。年は二十三歳。
蕭蕭の幼夫を抱いて棗(なつめ)の木の下に行き棗を叩いた。
細い竹ざおで棗の木の樹上をはたくと、落ちた棗が地面をいっぱいにおおった。

「花狗にいさん、やめなよ。多すぎて食べきれないよ」

そう呼ばわっているのが聞こえていても、それでもなお手をやすめない。
それからも、幼夫が棗をほしがっているのだからというふうに、
花狗はどうしても言うことをきかなかった。

そこで蕭蕭はまた幼夫に注意した。

「弟弟、弟弟、おいで。拾っちゃだめ。
ナマモノを食べ過ぎるとお腹が痛くなるよ! 」

幼夫は蕭蕭の言うことをきいた。
棗(なつめ)をわしづかみにし、
蕭蕭のそばにやってきて蕭蕭に食べさせようとする。

「ねえちゃん、これおっきいよ」

「いらない」

「ひとつ食べなよ」

蕭蕭の両手があいているわけがない。
木の葉の帽子がちょうどできあがるところだった。
時間がない。まだこれから人の手伝いをしなければならない。

「弟弟(ディーディ)、棗をねえちゃんのお口に入れて」

幼夫は蕭蕭の言いつけどおりにすると、それが面白くてハハハと大笑いをした。
蕭蕭は、幼夫に棗を下に置かせ、帽子のふちをしっかりと持たせ、
それから新しい木の葉をとりつけた。

幼夫は蕭蕭のいいつけどおりにしてはいても、
いつもいたずらっぽく体を揺すり歌を歌っている。
この子はもともと猫みたなところがあって、嬉しいと大騒ぎをする。

「弟弟、それ、何の歌? 」

「花狗(ホアゴウ)にいちゃんが教えてくれた民謡だよ」

「ちゃんと歌って、ねえちゃんにきかせて」

幼夫は帽子のふちをひっぱるのを手伝いながら、
覚えているとおりに歌を歌った。

空に雲がわきあがる         雲はばらばら
とうもろこし畑に            さやいんげん植えた
さやいんげんが            とうもろこしに巻きつき悪さする
可愛いおぼこは            若衆にだきつき悪さする

空に雲がわきあがる          雲と雲が重なった
地下に塚を埋めたら          塚と塚が重なった
可愛いおぼこは碗を洗う        碗と碗が重なった
可愛いおぼこのお床の上で      人と人が重なった


★旧暦(農暦)の季節

       孟・初      中・仲・盛       晩・季
春        一月        二月         三月
夏        四月        五月         六月
秋        七月        八月         九月
冬        十月       十一月        十二月

孟春・初春、   孟夏・初夏、   孟秋・初秋、   孟冬・初冬
仲(中)春、    盛夏、      仲(中)秋、    盛冬
晩春・季春、   晩夏、      晩秋、      晩冬

全部つけてもいいのですが、日本語ではなじみのないものもありますので
ポピュラーな言い方のみ。
仲(中)秋の名月というのは、この表で八月のことだとわかります。
孟冬といったら、冬のはじめ十月のことです。


つづく

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