紫陽花亭日乗

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Re: 『蕭蕭』     沈従文

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/10/16 00:42 投稿番号: [662 / 735]
女学生は、学校で男女一緒に授業を受け勉強をする。
親しくなると勝手気儘にその男子と寝る。仲人はいらないし結納も不要だ。
それを名づけて「自由」という。

女学生も州や県の役人になり眷属を引き連れ赴任する。
男はその女学生に対してやはり、「老爺(ラオイエ)・大旦那さま」と呼び、
子供は「少爺(シァオイエ)・若旦那さま」と呼ぶ。

女学生は自分では牛を飼わないのに牛乳や羊の乳を飲む。
まるで子牛や子羊みたいだ。
乳を買うときには鉄製の缶になみなみと注ぐ。

女学生は用事のないときには歌劇の公演を見に行く。
そこはほとんど大きな廟と同じで、ポケットから銀貨を一枚
(田舎ではその銀貨で雌鶏が五羽買える)
取り出して小さな四角い紙片を一枚買う。
その紙片を持って中に入り座って外人の演じる影絵芝居(映画)を見る。

はめられても誓約しないし、泣きもしない。

女学生は二十四歳になるまで決して嫁にいこうとしないのだ。
三十・四十になってもなんとまあ、恥ずかしげもなく嫁にいく。

女学生は男を恐れない。
男が彼女たちを侮辱することはできない。
もしも不当な扱いを受けたなら役所に訴え出て、役人は男から罰金を徴収する。
そのけっこうな罰金を彼女が独り占めして散財することもあるし
お上と折半にすることもある。

女学生は洗濯も飯炊きもしない。
豚の世話もしないし鶏も飼わない。
赤ん坊を生んでも、ひと月に五元あるいは十元を支払って人を雇い
子供の養育をまかせる。
自分はいつも日がな一日芝居見物に麻雀三昧、
かと思えば役立たずのくだらない本を読む。

要するに、言うなれば、いろんなことがすべて奇妙奇天烈にして
田舎の人間と違っており、まったく道理に合わぬと言う人もいる。

このとき、祖父の説明をひとわたり聴き終わった蕭蕭の心のなかに、
突如として言いようのないもやもやとした願望が湧き上がった。

もしも彼女もまた女学生であったなら、
祖父の語った女学生と同じようなあれこれができるのではないだろうか。
よかれあしかれ女学生とは、決して恐ろしいものではない。

だからひとつには、かえってこの田舎娘にとって
初めての身につまされることがらとなった。



★「老爺」「少爺」という言葉が登場していますが、この「老」は
老人を表現する言葉とはかぎりません。意味は多岐にわたっています。
若くても教師を「老師・ラオシ」といいますし、
日本でも年齢に関係なく、「大老」「老中」という役職がありました。
「少」は、「若い」という意味です。
ついでに言うと、漢語の「若」に「わかい」という意味はありません。
「弱」が「わかい」という意味で、音通の関係にあります。

★誓約しないし
原文は、「不賭呪」。「賭呪」は方言で「誓いをたてる」「詫びをいれる」
という意味。しかし「誓わない」では意味が通じにくい。
「二度と騙されない、と誓うことをしない」という意味かもしれないが、
この三文字だけではわからない。
騙されたときにとなえるおまじないのようなものがあるのだろうか。


つづく

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