刺客列傳 第五話 「荊軻」 承の段 2
投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/08/07 02:08 投稿番号: [276 / 735]
丹之私計、愚以爲誠得天下之勇士使於秦、窺以重利。秦王貪。其勢必得所願矣。
誠得劫秦王、使悉反諸侯侵地、若曹沫之與齊桓公、則大善矣。
則不可、因而刺殺之。彼秦大將擅兵於外、而内有亂、則君臣相疑。
以其輭、諸侯得合從、其破秦必矣。此丹之上願、而不知所委命。唯荊卿留意焉。
丹の私計、愚、以爲(おもへらく)誠(も)し天下の勇士を得ば秦に使わし、
窺(うかが)ふに重利を以てす。秦王貪(むさぼ)り、其の勢ひは必ず願ふ所を得ん。
誠(も)し秦王を劫(おびやか)すを得て、悉く諸侯の侵地を反(かへ)さしめ、
曹沫の齊の桓公に與(お)ける若(ごと)くならずば、則ち大いに善し。
則ち可(き)かずんば、因ってこれを刺殺せん。
彼の秦の大將、兵を外に擅(ほしひまま)にして、内に亂有らば、
則ち君臣相疑わん。
其の輭を以て、諸侯合從するを得ば、其れ秦を破るは必せり。
此れ丹の上なる願ひなり、而るに命を委(ゆだ)ねる所を知らず。
唯(ただ)荊卿、意を留(とど)めよ。
★「窺」は、字が換えてあります。原字は、「門」の中に「規」
★「留」は、原字は本字のほうです。
この丹の私案では、わたしのような愚かな人間が思いますのに、
もし天下の勇士を得て秦に使者として遣(や)り、
多くの利を以て誘引したとします。
秦王は貪欲ですから、
その勢い(流れ)として必ずこちらが期待する方向に運ぶでしょう。
もし秦王を脅迫することができ、その結果、ことごとく諸侯の侵地を
返還させることが、曹沫(そうばつ)が齊の桓公に奪取した領土を
返還させたようにできれば重疊至極。
それで秦王が要求をきかなかった場合には、
そこで秦王を刺殺すればいいのです。
あの秦の大將どもは、兵を国外に出して自分勝手をしておりますから、
内亂が有れば、君臣はお互いに疑念をもつことでしょう。
その隙に乗じて、諸侯が合從することができれば、
秦を破ることができるは必定。
これが丹のこの上ない願いなのですが、
ただその使命を誰に委(ゆだ)ねればいいのかがわからないのです。
唯(ただ)荊卿、どうかこのことにご留意ください」
★愚
太子丹が自分のことを謙遜していっています。「わたし」ということです。
丹は、始め荊軻に自分のことを「孤」といったわけです。
ところがここにきて「愚」といっています。
その心理の動きを推し量るとなかなか面白いと思います。
★丹は、問答無用で即座に秦王暗殺ではなく、
まず脅迫していうことをきかせる、と言っています。
こういった甘さも失敗の要因のひとつです。
つづく
709, 710
誠得劫秦王、使悉反諸侯侵地、若曹沫之與齊桓公、則大善矣。
則不可、因而刺殺之。彼秦大將擅兵於外、而内有亂、則君臣相疑。
以其輭、諸侯得合從、其破秦必矣。此丹之上願、而不知所委命。唯荊卿留意焉。
丹の私計、愚、以爲(おもへらく)誠(も)し天下の勇士を得ば秦に使わし、
窺(うかが)ふに重利を以てす。秦王貪(むさぼ)り、其の勢ひは必ず願ふ所を得ん。
誠(も)し秦王を劫(おびやか)すを得て、悉く諸侯の侵地を反(かへ)さしめ、
曹沫の齊の桓公に與(お)ける若(ごと)くならずば、則ち大いに善し。
則ち可(き)かずんば、因ってこれを刺殺せん。
彼の秦の大將、兵を外に擅(ほしひまま)にして、内に亂有らば、
則ち君臣相疑わん。
其の輭を以て、諸侯合從するを得ば、其れ秦を破るは必せり。
此れ丹の上なる願ひなり、而るに命を委(ゆだ)ねる所を知らず。
唯(ただ)荊卿、意を留(とど)めよ。
★「窺」は、字が換えてあります。原字は、「門」の中に「規」
★「留」は、原字は本字のほうです。
この丹の私案では、わたしのような愚かな人間が思いますのに、
もし天下の勇士を得て秦に使者として遣(や)り、
多くの利を以て誘引したとします。
秦王は貪欲ですから、
その勢い(流れ)として必ずこちらが期待する方向に運ぶでしょう。
もし秦王を脅迫することができ、その結果、ことごとく諸侯の侵地を
返還させることが、曹沫(そうばつ)が齊の桓公に奪取した領土を
返還させたようにできれば重疊至極。
それで秦王が要求をきかなかった場合には、
そこで秦王を刺殺すればいいのです。
あの秦の大將どもは、兵を国外に出して自分勝手をしておりますから、
内亂が有れば、君臣はお互いに疑念をもつことでしょう。
その隙に乗じて、諸侯が合從することができれば、
秦を破ることができるは必定。
これが丹のこの上ない願いなのですが、
ただその使命を誰に委(ゆだ)ねればいいのかがわからないのです。
唯(ただ)荊卿、どうかこのことにご留意ください」
★愚
太子丹が自分のことを謙遜していっています。「わたし」ということです。
丹は、始め荊軻に自分のことを「孤」といったわけです。
ところがここにきて「愚」といっています。
その心理の動きを推し量るとなかなか面白いと思います。
★丹は、問答無用で即座に秦王暗殺ではなく、
まず脅迫していうことをきかせる、と言っています。
こういった甘さも失敗の要因のひとつです。
つづく
709, 710
これは メッセージ 275 (ajisai110701 さん)への返信です.
固定リンク:https://yarchive.emmanuelc.dix.asia/1835412/bbgmdb2vdbffcbeh_1/276.html