紫陽花亭日乗

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刺客列傳 第五話 「荊軻」 起の段 3 

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/08/03 20:49 投稿番号: [252 / 735]
荊軻既至燕。愛燕之狗屠及善撃筑者高漸離。荊軻嗜酒日與狗屠及高漸離
飲於燕市。酒酣以往高漸離撃筑荊軻和而歌於市中相樂也。已而相泣旁若無人者。
荊軻雖游於酒人乎然其爲人沈深好書。其所游諸侯、盡與其賢豪長者相結。
其之燕、燕之處士田光先生亦善待之。知其非庸人也。


荊軻既に燕に至る。燕の狗屠及び善く筑を撃つ者高漸離を愛す。
荊軻酒を嗜み、日々狗屠及び高漸離と與(とも)に燕市に飲む。
酒酣(たけなわ)にして以て往き、高漸離筑を撃ち、荊軻和して
市中に歌ひ相樂しむなり。
已にして相泣き、旁(かたはら)に人無きが若(ごと)し。
荊軻、酒人と游ぶと雖も、然るに其の爲人(ひととなり)沈深にして書を好む。
その游する所の諸侯、盡くその賢豪長者と相結ぶ。
それ燕に之(ゆ)くに、燕の處士田光先生また善くこれを待す。
その庸に非ざる人を知ればなり。

それから荊軻は燕に行った。
燕の犬殺しや筑の名手である高漸離と親交を深めた。

荊軻は酒を好み、連日犬殺しや高漸離とともに燕の繁華街で飲んだ。
酒を飲み佳境に入ると、高漸離が筑をうち、荊軻がそれに和して
市中で歌うというふうに二人しておおいに楽しんだ。

それからまた二人して泣き、傍に人がいても意に介さず、
まるでそこに人がいないかのようであった。

荊軻は酒飲みたちと交遊はしていたが、
その人となりは沈着で深慮に富み読書を好んだ。

荊軻が歴遊した諸侯の国のどこに行っても
その土地の賢人・豪傑・有徳の人たちと交際を結んだ。

荊軻が燕に行ったとき、燕の處士・田光先生もまた荊軻を厚遇した。
荊軻の凡庸でない人となりを知っていたからである。


★處士
仕官せず民間にあって学識に長け、有徳であり、人々の尊敬を集めている人

★「已而相泣旁若無人者」
「旁若無人」の語源ですが、
現在この語に含まれているような悪い意味はありません。

★犬殺し・高漸離・田光先生・・・荊軻を認知

★2.と3.で荊軻に対する「認知」「不認知」を対比させています。


つづく

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