紫陽花亭日乗

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提婆達多 26

投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/07/16 21:38 投稿番号: [109 / 735]
父王の死により、アジャセの心は悔恨の情に懊悩した。
そのありさまを見かねた従者ジーバカが仏陀訪問を勧めた。
アジャセは仏陀を訪い、仏足を頂礼し仏陀にむかって問うた。

「世尊よ、願くば私の悔過をお受けください。
私は五欲に迷って父を殺しました。
世尊、憐みを垂れて私の悔過をおうけください」

「お前は愚にして父を殺した。
しかしながら今お前は自ら非を悔いている。
私はお前を憐むがゆえにお前の悔過を受ける」


仏陀の教をききおわりアジャセは仏陀を拝してこう言った。

「世尊よ、我今仏陀に帰依したてまつる。
法に帰依したてまつる。僧に帰依したてまつる。
願くは今よりのち終生優婆塞(うばそく)とならんことを」


アジャセも提婆達多のもとをはなれた。
それを機にさらに多くの弟子、俗信徒も離反した。
提婆達多はそのことをまったく知らなかったが、
一日まちに行乞に出てさんざんに辱められすべてを悟った。


その日彼は食事をとらなかった。
そして夕刻から高熱を発した。
提婆達多はひとり草庵の中でくりかえしくりかえし
今朝のまちでのできごとを思った。
それは脳髄に烙鉄(やきがね)をあてるようであった。
彼は呪いかつ呪った。沮喪(そそう)した。茫然自失した。

翌日から提婆達多の容態は一層悪くなった。
彼はいよいよ己に死期のせまったことを感じた。



一城の王子たりし幼時、華やかなりし青春の時、
酒、女、賭博、遊戯、狩猟・・・・・
過去の記憶が走馬灯のようにめまぐるしく廻っては消えてゆく。



つづく

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