提婆達多 ⑰
投稿者: ajisai110701 投稿日時: 2011/07/15 20:39 投稿番号: [100 / 735]
提婆達多は忽然大悟した。
「ヤショダラは自分の恋の手品を勘づいたのではないか」
己の卑劣な奸悪な動機、その醜悪な獣的な恋。
かつてシッタルタの不意の出家のためにもののあやめも分からなくなって
おぞくも彼のさしだした毒酒に酔わされてしまった彼女が、
夫の帰来によって悪酔から呼びさまされて彼の恋の真相を看破したのだと思った。
「ヤショダラは己(おれ)を嫌った。卑しんだ。蔑んだ」
彼はたまらなくなった。絶望の声をもらした。
彼はヤショダラの美しさを、それにひきかえて自分の醜さを思った。
そしてその清浄な彼女を悪念と欲望の餌として骨までもしゃぶった己の罪を思った。
彼は愧じかつ愧じた。
彼は自分をたたきつけて踏んで踏んで踏みにじってやりたかった。
「ヤショダラのところへいって懺悔しよう。
そうだ。すっかりうちあけて懺悔してしまおう」
提婆達多はやにわに跪いてヤショダラの膝に泣き崩れた。
彼女は逃れようとして身もだえたけれど、彼をおしのけるにはあまりにも力弱かった。
提婆達多はうつ伏したまましどろもどろにいう。
「私はあなたを騙した。
私はちっともあなたを思っていなかった。
ただ意地と嫉妬と復讐のためにあなたをとろうとした。
私は仕合の日からシッタルタを憎んでいた。
そしてあなたをつけねらった。
シッタルタの出家をそそのかしたのは私だ。
私は卑怯者だ。
私はあなたが若いばかりにあなたを抱きたいと思った。
私はあらゆる若い女を抱いてみたかった。
あなたが人のものだからなおさら抱いてみたかった。
一度抱いてからはただ気ちがいじみた欲望からさんざんにあなたを弄んだ。
私はあなたがたわいなく騙されるのをみてあなたの馬鹿を笑った。
そしてあなたがよせてくださる情をさえうるさく思った。
私はどこまでもあなたをなぐさむつもりだった。
欲望のためには肉体を、復讐のためには貞操を。
そして思うさまなぐさんだあげくにはあなたをつきはなすつもりだった。
ところがいつか私はあなたのまごころに動かされてしまった。
私は恋を知った。
それと同時にあなたの美しさがはじめてわかった。
それにひきかえて自分の穢いことがしみじみとわかった。
私はあなたが恋しい。可愛い。有りがたい。
私は今が今やっと眼がさめた。私は懺悔しにきた。
私はこんな穢い者だ。悪人だ。畜生だ。
私は甘んじて受ける。どんな非難でも、軽蔑でも。
ただ・・・・・ただ・・・・・どうか私を棄てないで・・・・・
私はどうしてもあなたと別れるのはいやだ・・・・・」
つづく
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「ヤショダラは自分の恋の手品を勘づいたのではないか」
己の卑劣な奸悪な動機、その醜悪な獣的な恋。
かつてシッタルタの不意の出家のためにもののあやめも分からなくなって
おぞくも彼のさしだした毒酒に酔わされてしまった彼女が、
夫の帰来によって悪酔から呼びさまされて彼の恋の真相を看破したのだと思った。
「ヤショダラは己(おれ)を嫌った。卑しんだ。蔑んだ」
彼はたまらなくなった。絶望の声をもらした。
彼はヤショダラの美しさを、それにひきかえて自分の醜さを思った。
そしてその清浄な彼女を悪念と欲望の餌として骨までもしゃぶった己の罪を思った。
彼は愧じかつ愧じた。
彼は自分をたたきつけて踏んで踏んで踏みにじってやりたかった。
「ヤショダラのところへいって懺悔しよう。
そうだ。すっかりうちあけて懺悔してしまおう」
提婆達多はやにわに跪いてヤショダラの膝に泣き崩れた。
彼女は逃れようとして身もだえたけれど、彼をおしのけるにはあまりにも力弱かった。
提婆達多はうつ伏したまましどろもどろにいう。
「私はあなたを騙した。
私はちっともあなたを思っていなかった。
ただ意地と嫉妬と復讐のためにあなたをとろうとした。
私は仕合の日からシッタルタを憎んでいた。
そしてあなたをつけねらった。
シッタルタの出家をそそのかしたのは私だ。
私は卑怯者だ。
私はあなたが若いばかりにあなたを抱きたいと思った。
私はあらゆる若い女を抱いてみたかった。
あなたが人のものだからなおさら抱いてみたかった。
一度抱いてからはただ気ちがいじみた欲望からさんざんにあなたを弄んだ。
私はあなたがたわいなく騙されるのをみてあなたの馬鹿を笑った。
そしてあなたがよせてくださる情をさえうるさく思った。
私はどこまでもあなたをなぐさむつもりだった。
欲望のためには肉体を、復讐のためには貞操を。
そして思うさまなぐさんだあげくにはあなたをつきはなすつもりだった。
ところがいつか私はあなたのまごころに動かされてしまった。
私は恋を知った。
それと同時にあなたの美しさがはじめてわかった。
それにひきかえて自分の穢いことがしみじみとわかった。
私はあなたが恋しい。可愛い。有りがたい。
私は今が今やっと眼がさめた。私は懺悔しにきた。
私はこんな穢い者だ。悪人だ。畜生だ。
私は甘んじて受ける。どんな非難でも、軽蔑でも。
ただ・・・・・ただ・・・・・どうか私を棄てないで・・・・・
私はどうしてもあなたと別れるのはいやだ・・・・・」
つづく
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これは メッセージ 99 (ajisai110701 さん)への返信です.
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