酒
投稿者: tokyo_cachito3 投稿日時: 2012/12/02 07:43 投稿番号: [2935 / 3149]
酒をテーマにしたら話に取りとめがなくなる。だから話を絞る。「酒はいいね、誰でも酔わせてくれる」昔、古今亭志ん生が若い立川談志に語ったという。当たり前のことだが、志ん生が言うと、ファンの一人としては「さて、どういう含みがあるのか」と考えるのである。この師匠、子供の頃からの酒飲みだったというが、あの戦争もいよいよ切羽詰って酒の配給【これをタダで呉れるものと勘違いしちゃいけない】も途絶えた頃、「満州へ行けば物は豊富、酒なんかいくらでもある」と聞いたから堪らない。酒を飲みたい一心で、三遊亭円生を誘い、その満州へ「皇軍兵士慰問」に行くことになった。女房、子供なんか置き去りである。新潟から不定期の連絡線が出ていて、アメリカの潜水艦が遊弋している日本海をどうにか渡りきった。朝鮮から満州に入り、すぐに新京の放送局に抱えて貰った。内地でもすでに有名な噺家だったから大いに歓迎され、下にも置かぬもてなしぶりだったという。在満の日本人には「満州社会主義」と言う言葉があって、軍人たちもこの王道楽土に三井三菱などの日本の財閥が来るのを嫌い、表面的には、そしてもちろん日本人には、生活の心配がない新天地だった。植民地だから当然といえば当然で、酒でもなんでも有り余るほどあったという。その放送局に若いアナウンサーがいて、彼の立ち振る舞い、間合いが志ん生の目に留まった。「これはいい芸人になれる」と惚れ込み、「君ねえ、東京の寄席に出れば三亀松くらいの人気は出るよ」と口説いた。新京の夜ふけ、毎晩のように泥酔した志ん生を介抱しながら宿に届けるこの若いアナウンサー、まだ無名の森繁久弥である。
これは メッセージ 2934 (tok*o*cach*to3 さん)への返信です.
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