隠州視聴合紀「州」の用法と解釈 (6/7)
投稿者: te2222000 投稿日時: 2005/05/30 05:46 投稿番号: [9653 / 18519]
【4】島を指し示す言葉
次に隠州視聴合紀の中で、一度ある島について述べた後、もう一度その島に言及する際、どのような言葉でそれを指し示しているかを調べました。
その結果、島を指し示す場合は以下の四つが使われていました。
a.「此」… 11例
−−−−−−−−−−−−
例.(巻四・知夫郡・美田郷)
南に去ること三十間ばかりにして海に出たる小嶋あり
此を小山と云
−−−−−−−−−−−−
b.「其」 … 6例
−−−−−−−−−−−−
例.(巻三・隠地郡・津戸)
左の入海の前平につゞきて大形島有
其より西に白戸島賤木島と云あり
−−−−−−−−−−−−
c.「此島」 … 3例
−−−−−−−−−−−−
例.(巻二・周吉郡・蛸木浦)
又津戸に渡る半に篷島(とましま)と云あり
皆大岩なり
昔津戸蛸木此島をあらそふ
−−−−−−−−−−−−
d.「此嶋」 … 1例
−−−−−−−−−−−−
例.(巻四・知夫郡・知夫郡同別府)
河の南に見付嶋と云あり
蓋崎村より入来る船の先づ此嶋を見に依り
−−−−−−−−−−−−
念のため「此島」と「此嶋」を分けましたが、実際には「島」と「嶋」は全く区別無く使われています。たとえば島前について「島前」「嶋前」の両方の表記をしています。この二字については、筆写の過程でも容易に入れ替わると思われるので同じ字と見てよいと思います。
【5】考察
1章で、「此州」という言葉をどの程度重く考える必要があるかを調べたいと書きました。
前章までの調査結果に基くと、国代記・地理の「此州」は隠州を指すと考えることが他の個所での用例と一致することになります。従って、それなりの理由がなければ、それ以外の解釈をすることは避けるべきだと私は考えます。
このことを踏まえ、「此州」の各解釈について私の思いつく疑問を挙げます。
国代記・地理の「此州」の解釈としては、以下の可能性が考えられます。
a. 此州は竹島を指す
b. 此州は竹島と松島を指す
c. 此州は隠州を指す
更に c の場合は竹島と松島の所属によって、三つに分けて考えることにします。
c1. 此州は隠州を指し、竹島と松島は朝鮮領である
c2. 此州は隠州を指し、竹島と松島はどこの国にも属さない無人島である
c3. 此州は隠州を指し、竹島と松島は隠州の一部である
これらについて順番に検討してみます。
【5.1】a. 此州は竹島を指す
下條正男氏の『竹島は日韓どちらのものか』で主張されている解釈です。この解釈については以下の疑問が浮かびます。
○疑問 a-1
隠州視聴合紀の他の個所では、「州」という字が行政区域としての国の意味でのみ使われている。また、島を指すのに「此島」「此嶋」等を使い、「此州」という書き方はしていない。斉藤豊仙は本当に「州」を島の意味で使えると考えていたのだろうか。
○疑問 a-2
隠州視聴合紀の他の個所では、「此州」という言葉はいずれも隠州を指している。巻二の周吉郡・蛸木浦の節のように、先行する文中に「隠州」という言葉が現れず、代わりに「松島」という言葉が出てくる文脈でさえそうである。まして、隠州の地理的環境を述べている国代記冒頭の文脈で「此州」と書いた場合、竹島のことではなく隠州のことだと誤解される恐れが極めて大きい。そのことは斉藤豊仙も認識できた筈である。それにも関わらず、あえて「此州」という言葉を使ったのはなぜか、
「深い考えはなく、島の意味を持つ字の中から、たまたま州という字を選んだだけだ」という説明では、私は納得できません。
(続く)
次に隠州視聴合紀の中で、一度ある島について述べた後、もう一度その島に言及する際、どのような言葉でそれを指し示しているかを調べました。
その結果、島を指し示す場合は以下の四つが使われていました。
a.「此」… 11例
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例.(巻四・知夫郡・美田郷)
南に去ること三十間ばかりにして海に出たる小嶋あり
此を小山と云
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b.「其」 … 6例
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例.(巻三・隠地郡・津戸)
左の入海の前平につゞきて大形島有
其より西に白戸島賤木島と云あり
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c.「此島」 … 3例
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例.(巻二・周吉郡・蛸木浦)
又津戸に渡る半に篷島(とましま)と云あり
皆大岩なり
昔津戸蛸木此島をあらそふ
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d.「此嶋」 … 1例
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例.(巻四・知夫郡・知夫郡同別府)
河の南に見付嶋と云あり
蓋崎村より入来る船の先づ此嶋を見に依り
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念のため「此島」と「此嶋」を分けましたが、実際には「島」と「嶋」は全く区別無く使われています。たとえば島前について「島前」「嶋前」の両方の表記をしています。この二字については、筆写の過程でも容易に入れ替わると思われるので同じ字と見てよいと思います。
【5】考察
1章で、「此州」という言葉をどの程度重く考える必要があるかを調べたいと書きました。
前章までの調査結果に基くと、国代記・地理の「此州」は隠州を指すと考えることが他の個所での用例と一致することになります。従って、それなりの理由がなければ、それ以外の解釈をすることは避けるべきだと私は考えます。
このことを踏まえ、「此州」の各解釈について私の思いつく疑問を挙げます。
国代記・地理の「此州」の解釈としては、以下の可能性が考えられます。
a. 此州は竹島を指す
b. 此州は竹島と松島を指す
c. 此州は隠州を指す
更に c の場合は竹島と松島の所属によって、三つに分けて考えることにします。
c1. 此州は隠州を指し、竹島と松島は朝鮮領である
c2. 此州は隠州を指し、竹島と松島はどこの国にも属さない無人島である
c3. 此州は隠州を指し、竹島と松島は隠州の一部である
これらについて順番に検討してみます。
【5.1】a. 此州は竹島を指す
下條正男氏の『竹島は日韓どちらのものか』で主張されている解釈です。この解釈については以下の疑問が浮かびます。
○疑問 a-1
隠州視聴合紀の他の個所では、「州」という字が行政区域としての国の意味でのみ使われている。また、島を指すのに「此島」「此嶋」等を使い、「此州」という書き方はしていない。斉藤豊仙は本当に「州」を島の意味で使えると考えていたのだろうか。
○疑問 a-2
隠州視聴合紀の他の個所では、「此州」という言葉はいずれも隠州を指している。巻二の周吉郡・蛸木浦の節のように、先行する文中に「隠州」という言葉が現れず、代わりに「松島」という言葉が出てくる文脈でさえそうである。まして、隠州の地理的環境を述べている国代記冒頭の文脈で「此州」と書いた場合、竹島のことではなく隠州のことだと誤解される恐れが極めて大きい。そのことは斉藤豊仙も認識できた筈である。それにも関わらず、あえて「此州」という言葉を使ったのはなぜか、
「深い考えはなく、島の意味を持つ字の中から、たまたま州という字を選んだだけだ」という説明では、私は納得できません。
(続く)
これは メッセージ 9652 (te2222000 さん)への返信です.
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