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第三話 イランでの結婚許可を得るまで②

投稿者: hafez0211 投稿日時: 2010/04/10 04:32 投稿番号: [3576 / 3876]
何度目かのインタビューの帰り、廊下に座って待っていた20代の青年と50代のホームレスのような日本人女性と話す機会があり互いに情報交換をした。
彼らは申請してから1年以上かかっているという。
(年が離れすぎているのが問題なのかもね。偽装結婚ではないかと疑われているんでしょうね)
(悪いけど、どうみても日本行きが目的の結婚としか思えない。許可が下りるかどうかもあやしいところだよ)
  そんな会話を私たちはコソコソかわしながら、もしや私たちもそうなるのではないか?と暗い気持ちになった。
インタビューの呼び出しがなかなか、来なくなり不安にかられた私たちはバイクで地元の警察署に行った。
  すると、そこの担当者はニヤニヤしながら「テヘランから指示がないと動けないものでね。ところで我が家には小さな子ども達がいてねぇ。甘い物が好きなんだよね」と言ってきた。
夫は相手の言わんとしていることを察し、二言三言挨拶した後ちかくのケーキ屋に行き一番高いチョコレートを2Kg買って、もういちど署にもどった。
担当者は「そんな、わざわざ。いいのに、いいのに」と言いながらも満足げだった。
「妻は、母一人子一人なんです。しかもお母さんは病弱で、今も娘の帰りを待っているんです。早く結婚許可をいただけるよう、お力添えをお願いします」と言って、夫は胸に手を当て尊敬の念をこめ懇願した。
同僚がいる中、露骨に賄賂を要求してくる姿に呆気にとられた私だったが、夫は「公務員は賃金が安いから生活が大変なんだよ。だから仕方ない」とこともなげに言い、私は文化の違いを感じざるを得なかった。

インタビューを重ねるうち、私たちは自分たちがスパイだとか政治絡みで国外逃亡するための偽装結婚ではないかとか疑われていることを感じ始めた。
質問内容についても複雑になってきて、とても私の語学力ではわからなかったが、夫は「たぶん前届いた本が事態をややこしくしているんだと思う」と言っていた。そして「質問がすごく陰湿になってきていて、どうにかして私たちの尻尾をつかんでやろうといった感じになってきているんだ。結婚させないつもりなんだよ」とも説明した。

やがて夫は精神不安定になり、タバコの量が増え、お酒もひっきりなしに飲むようになっていった。不眠状態になり常にイライラしていて、家族も声をかけるのがためらわれるほどだった。
ある日彼は疑心暗鬼に刈られ、発禁扱いになっている愛読書やメモでぎっしり埋まった私のスケジュール帳を庭で燃やしてしまった。
「奴らがいつ踏み込んできてもいいように、こっちも備えているんだ」そう言う夫に私たちは「そこまでしなくても。大切な本だったのに。考えすぎよ」と声をかけたが、全く聞こえていないようだった。
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