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米澤邦男「捕鯨紛争の歴史」(8)

投稿者: r13812 投稿日時: 2011/06/06 20:58 投稿番号: [54315 / 62227]
劇は更に展開する。科学委員会によるこの決定に過激反捕鯨過激グループは、更にこれ
に対抗する。特に2000 年12 月1 日ドミニオン紙に、「グリーンピースが政府の方針を決
定する」とその無責任をなじられたニュージーランド政府は、96 年6 月のIWC の直後の
8 月、ジュネーブで開催された国連環境開発会議準備会議に「捕鯨10 年停止決議」を追加
議題とするよう急遽要請した。同準備会議上同政府が配布したイアン・スチュアート同国
IWC 代表名の文書は、決議の理由を次のように述べている。
「本年IWC は、科学委員会がRMP を採択した。現行条約の規定上、これにより捕鯨の
再開は不可避となった。捕鯨は早ければ明年にも再開される。これを防ぐ唯一の方法は、
明年リオデジャネイロで開催される国連環境開発会議で、本決議を採択することである。
これが採択されれば、ニュージーランドは、捕鯨禁止条約を提唱する。」

元外務省次官補であったイアン・スチュアートは、しかし、倫理を捕鯨禁止の理由とす
ることはできず、捕鯨再開は違法操業により資源の枯渇を招くと主張したのである。
自ら大した理由はないと告白したようなものであるが、国連環境開発会議(地球サミット)
は、ニュージーランド提案にさしたる関心を示さず、同政府はこの案を撤回、国連環境開
発会議のアジェンダ21 の採択にも反対しなかった。アジェンダ21 は、国連海洋法条約の
誠実な実施を求める。普通の国際条約では、これで幕引きになるはずであるが、「RMP に
よる捕鯨再開を阻止することは不可能である」と告白したニュージーランド等の過激反捕
鯨グループは、RMP の破壊に全力を傾け、遂に本稿冒頭に指摘した通り、1996 年英国ガ
マーIWC 担当相による倫理を理由とする捕鯨反対発言となった。

条約付表規定の如何にかかわらず、82 年モラトリアムは、科学委答申の時点遅くとも本
会議におけるRMP 採択の時点で効力を失ったことは明らかである。又、狐狩りのチャン
ピオンであるガマー氏の信ずる倫理が倫理の名に値すると假定しても93 年6 月30 日付の
ザタイムズ(ロンドン)の社説が指摘したように、IWC 条約1982 年国連海洋法条約、1992
年国連環境会議のアジェンダ21 は、明らかにそのような倫理を前提としない。特定倫理
を票の力で他国に強い得るとする前提も又、文明国の容易に主張しうるものではないはず
である。繰りかえすが、IWC は2001 年米国元IWC 代表ジョン・クナウスが述べたよう
に誠意ある国際交渉の場としての存在を既に放棄して久しいのである。
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