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米澤邦男「捕鯨紛争の歴史」(7)

投稿者: r13812 投稿日時: 2011/06/06 20:57 投稿番号: [54314 / 62227]
(3)改定資源管理手続き(RMP)の完成からその破壊への道程

前記モラトリアム決議の提案者は、科学委員会全会一致によるRMP 完成のような劇的
な展開を予想していたはずはない。科学委員会は彼等及びグリーンピースなどの動物愛護
団体が送り込んだ科学者や運動家により100 名近くまでふくれ上がり、南アのバターワー
ス教授等資源数学などの分野で第一人者と目された学者は、暁天の星とも云える存在とな
っていたからである。

しかし、劇的に事態は動く。その契機をつくったのは、当時東京大学の教授であった田
中昌一氏等であり、氏等は、工学で広く使われるフィードバック理論の上に立つ新しい捕
獲枠方式を考案した。複雑な理論を簡略して説明すれば、要するに、捕獲量を推定資源量
が内蔵する誤差に対し、これを無視する範囲にとどめ、以後の捕獲から生ずる情報をフィ
ードバックしつつ新しい捕獲枠を決定するというメカニズムである。具体的に云えば、年々
4%ほど自然増加する南氷洋ミンク鯨の場合、65 万頭の資源量に対し、捕獲量は2 千頭位
から出発する。

元々資源量推定には、色々大きな安全係数が設けられており、実際の資源量は推定量を
かなり上廻るはずであり、そこまでの安全を保証する実際的な必要性があるか大きな疑問
であるが、田中方式による捕獲量は資源の長短期変動を追跡する直接的鍵を提供する。し
かし、過剰な資源を適正な水準に近づけるという資源の管理能力は持たない。その意味で
この方式は将来本格的資源管理法を確立するまでの暫定的措置という位置づけになるが、
その斬新なアプローチは、多くの学者の学問的興味を大きく刺戟した。先ず、南アケープ
タウン大学のバターワース教授が同じようなアイデアから別の方法を考案し、更に、あろ
うことか反捕鯨グループのチャンピオンと云われるクックが又別な方法を案出、これを科
学委員会に提出する。後に仲間から自らの足を撃ったとネイチャーの誌上で揶揄された事
件である。

1991 年6 月のIWC 科学委は、上記三提案の優劣をシミュレーション比較で検証し、そ
れぞれに優劣はないと判定、結果として、皮肉にもクック提案を全会一致により本会に答
申した。又、これまでに、モラトリアムの第二付帯決議である資源再評価についても、わ
が国の統計数理研究所の所謂赤松理論に基く資源評価法を使用してミンクの資源量を65
万頭として算定、これも全会一致により本会議に答申されている。

科学委員会は、この時点で明らかに過激反捕鯨派を含め、RMP と再評価により事態を
収拾すべきであると判断し、又、それを期待して本会議に答申したのである。
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