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日本の恥ずべき捕鯨史(4)

投稿者: aguatibiapy 投稿日時: 2007/01/13 14:34 投稿番号: [17190 / 62227]
その鯨は銛を打たれ船の船尾に引き寄せられた。   そこでは大型のウィンチが70トンはあろうかという66フィートの獲物をスリップウェイによってゆっくり巻き上げた。その日ポルトガルから200マイルの海域では海は静かであった。   ところが午後のスコールが西から吹き始め、船を揺らした。

風と波がトンナを打つにつれ、鈍く光る死んだ鯨は甲板の左舷に滑り寄り、このため船は激しく傾いた。   改造船は姿勢を元に戻す事ができなかった。   波は甲板を洗い、開口部やハッチに流れ込んだ。   海水はエンジンルームに滝のように流れ込み、配電盤はショートし、嫌なにおいの煙が通路に流れ込んだ。

トンナの乗組員は船を傾ける鯨を解き放つべく絶望的な試みを行なった。   然し電動ウィンチは凍り付いており、鯨を巻き上げるケーブルは素早く切断するには太過ぎた。   ベステルヘイム船長は鯨を切断して舷側から投げ捨てるよう大声で命じた。   三人の日本人解体者達は狂気のように大きなクジラの切断を始めた。

この上も無い皮肉な光景の中で、トンナは銛を打たれたクジラのようにもがいた。

波は容赦なく海賊捕鯨船を呑み込もうとしていた。   7時40分に、トンナの無線ラジオは危機信号を発信した。   主として南アフリカ人たちで占められる42人の乗組員は3隻の救命ボートに乗り移った。

然し、ヘルマン・メルビルの小説から書き写したように、ベステルヘイム船長は船と共に沈む事を決意した。   多分、この状況からの屈辱感からであろうか、彼はトンナ号が船尾から沈んでいく時、ブリッジから乗組員達に手を振っていた。   そしてもう一頭のモビー・ディックによって海底へ引き込まれて行ったのである。

その夜、総ての乗組員は無事に通りかかったギリシャの貨物船に救助された。   降り立ったマデイラ港の当局者の質疑で、乗組員は口を揃えて彼等が「日本人の為に」捕鯨していたと語った。   3人の解体専門員、シンカワ・イサム、サイトウ・テツヒデ、シバタ・マサキチはいずれも元は大洋漁業の捕鯨船で働いていたのであった。
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