Re: 731部隊細菌戦ー地裁判決文
投稿者: nyankotyanndamon 投稿日時: 2009/03/16 17:05 投稿番号: [28174 / 41162]
原告らの主張する本件細菌戦は,旧日本軍がその存在目的そのも
のである戦闘行為として行ったものであるというのであるから,その行為は公権力
の行使(国の統治権に基づく優越的な意思の発動としての強制的・命令的行為)そ
のものであり,当時民法の適用対象となっていた非権力的作用に分類されるという
ことはできない。
また,その点を措くとしても,この点の原告らの主張は,軍隊を土地の工作物
(民法717条)や小学校の校庭に設置された遊具と同視するものであって,採用
することができない。
(5)
以上のとおりであるが,本件細菌戦と権力作用との関係について若干説示を補
足する。
原告らは,本件細菌戦のような国の戦争行為は「権力作用」に含まれないから,
仮に国家無答責の法理が通用していたとしても,これを本件に適用することはでき
ないと主張している。そして,原告らは,国家無答責論は,「支配者と被支配者の
自同性」や「国家と法秩序の自同性」を根拠とする法理であるから,ある国家とそ
の統治権に服する国民との間にのみ成立する法理であるとしている。
確かに,欧米で主権無答責の法理が受け継がれていく過程において,原告らのい
う「支配者と被支配者の自同性」や「国家と法秩序の自同性」の論理が同法理を支
えるものとして唱えられたことがあったと解される。しかし,我が国に国家無答責
の法理が確立した明治23年以降において,当時の我が国の法体系が,権力的作用
の被害者が外国人である場合にその外国人に損害賠償請求権を付与していたことを
示す事実は何ら認められず,日本人も外国人も等しく国家無答責の法理の適用を受
けていたものと考えられる。このことは,旧民法の立案に深く関与した井上毅が,
前記のとおり国家無答責の法理の根拠を行政権の円滑な運用に求めていたことによ
っても裏付けられるところである。そして,戦争行為が国家の公権力行使の重要な
一内容であることは
明らかであるから,当時の法制度の下では,外国人も日本民法に基づき違法な戦争
行為による損害の賠償を請求することはできなかったというほかはない。
なお,原告らはパナイ号事件を援用しているが,弁論の全趣旨によれば,同事件
は国家間において解決が図られた事件であって,被害者個人が民法の規定に基づき
被告に損害賠償を求めたものではないと認められるから,これをもって外国人に国
家無答責の法理が適用されなかった事例であるとはいえない。
(6)
したがって,日本民法に基づく原告らの請求も,その他の点について検討する
までもなく理由がない。
これは メッセージ 28167 (fukagawatohei さん)への返信です.
固定リンク:https://yarchive.emmanuelc.dix.asia/1143582/fn5febg5tbba6a1a6bdbe730v0bix6afc0a9oa29ta4n13_1/28174.html