731部隊細菌戦ー地裁判決文本文抜粋
投稿者: nyankotyanndamon 投稿日時: 2009/03/16 10:39 投稿番号: [28169 / 41162]
(3)
ヘーグ陸戦条約3条の用語の通常の意味に照らした解釈(条約法条約31条1
項)
ア 国際法における伝統的な考え方によれば,国際法上の法主体性を認められるの
は原則として国家であり,個人は,国際法においてその権利義務について規定さ
れ,かつ,個人自身の名において国際的にその権利を主張し得る資格が与えられて
初めて例外的に国際法上の法主体性が認められると解されている。また,個人が他
国の国際違法行為によって損害を受けた場合には,当該個人は加害国の国際責任を
追及するための国際請求を提出し得る主体としては認められず,その個人の属する
本国が,当該個人の事件を取り上げ外交保護権を行使することによって,自らに対
する法的な侵害として引き受け,国家間関係に切り替えて相手国(加害国)に国家
責任を追及するものと解されている。
しかるところ,ヘーグ陸戦条約3条は,「前記規則ノ条項ニ違反シタル交戦当事
者ハ,損害アルトキハ,之カ賠償ノ責ヲ負フヘキモノトス。交戦当事者ハ,其ノ軍
隊ヲ組成スル人員ノ一切ノ行為ニ付責任ヲ負フ。」と規定して,附属規則(ヘーグ
陸戦規則)に違反した締約国に損害賠償責任を課しているが,その相手方(損害賠
償請求権を有する者)についての文言は存在しない。また,ヘーグ陸戦条約及びヘ
ーグ陸戦規則には,個人が国家に対して損害賠償を請求することを前提とした手続
規定も存在しない。さらに,同条約2条は「第1条ニ掲ケタル規則及本条約ノ規定
ハ,交戦国カ悉ク本条約ノ当事者ナルトキニ限,締約国間ニノミ之ヲ適用ス。」と
定めており,同条は締約国間の権利義務のみを定めているように見える。このよう
に,ヘーグ陸戦条約
が個人に請求権を認める明文規定を設けていないことは,前示のような国際法の基
本的な性格に照らしてみるならば,同条約が国際法上の原則どおり国家と国家との
間の権利義務を定め,個人の請求権を認めたものではないことを示していると理解
するのが自然である。
イ ヘーグ陸戦条約及びヘーグ陸戦規則の趣旨・目的は,同条約及び同規則の規定
に照らすと,陸戦において軍隊の遵守すべき事項を定め,もって戦争の惨害を軽減
しようとする点にあるものと解される。もとより,戦争の惨害は最終的には個人に
帰するものであるから,同条約及び同規則の究極の趣旨・目的は,陸戦の過程にお
ける非戦闘員を含めた個人の保護にあると解することができる。しかし,国際法の
存在形式としての「条約」の基本的な性格やヘーグ陸戦条約及びヘーグ陸戦規則の
規定内容に照らすと,同条約及び同規則の直接的な趣旨・目的は,各締約国の軍隊
の規制の点にあると解するのが相当である。
ウ 以上の諸点に照らすと,文脈と条約の趣旨・目的とに照らして与えられる用語
の通常の意味に従って解釈する限り,ヘーグ陸戦条約3条の規定は,ヘーグ陸戦規
則の遵守を実効化するため,同規則に違反した交戦国の損害賠償責任を定めたもの
であり,同規則違反によって損害を被った個人が加害国家に対して直接損害賠償請
求権を行使することまでを認めたものではないと解するのが相当である。
項)
ア 国際法における伝統的な考え方によれば,国際法上の法主体性を認められるの
は原則として国家であり,個人は,国際法においてその権利義務について規定さ
れ,かつ,個人自身の名において国際的にその権利を主張し得る資格が与えられて
初めて例外的に国際法上の法主体性が認められると解されている。また,個人が他
国の国際違法行為によって損害を受けた場合には,当該個人は加害国の国際責任を
追及するための国際請求を提出し得る主体としては認められず,その個人の属する
本国が,当該個人の事件を取り上げ外交保護権を行使することによって,自らに対
する法的な侵害として引き受け,国家間関係に切り替えて相手国(加害国)に国家
責任を追及するものと解されている。
しかるところ,ヘーグ陸戦条約3条は,「前記規則ノ条項ニ違反シタル交戦当事
者ハ,損害アルトキハ,之カ賠償ノ責ヲ負フヘキモノトス。交戦当事者ハ,其ノ軍
隊ヲ組成スル人員ノ一切ノ行為ニ付責任ヲ負フ。」と規定して,附属規則(ヘーグ
陸戦規則)に違反した締約国に損害賠償責任を課しているが,その相手方(損害賠
償請求権を有する者)についての文言は存在しない。また,ヘーグ陸戦条約及びヘ
ーグ陸戦規則には,個人が国家に対して損害賠償を請求することを前提とした手続
規定も存在しない。さらに,同条約2条は「第1条ニ掲ケタル規則及本条約ノ規定
ハ,交戦国カ悉ク本条約ノ当事者ナルトキニ限,締約国間ニノミ之ヲ適用ス。」と
定めており,同条は締約国間の権利義務のみを定めているように見える。このよう
に,ヘーグ陸戦条約
が個人に請求権を認める明文規定を設けていないことは,前示のような国際法の基
本的な性格に照らしてみるならば,同条約が国際法上の原則どおり国家と国家との
間の権利義務を定め,個人の請求権を認めたものではないことを示していると理解
するのが自然である。
イ ヘーグ陸戦条約及びヘーグ陸戦規則の趣旨・目的は,同条約及び同規則の規定
に照らすと,陸戦において軍隊の遵守すべき事項を定め,もって戦争の惨害を軽減
しようとする点にあるものと解される。もとより,戦争の惨害は最終的には個人に
帰するものであるから,同条約及び同規則の究極の趣旨・目的は,陸戦の過程にお
ける非戦闘員を含めた個人の保護にあると解することができる。しかし,国際法の
存在形式としての「条約」の基本的な性格やヘーグ陸戦条約及びヘーグ陸戦規則の
規定内容に照らすと,同条約及び同規則の直接的な趣旨・目的は,各締約国の軍隊
の規制の点にあると解するのが相当である。
ウ 以上の諸点に照らすと,文脈と条約の趣旨・目的とに照らして与えられる用語
の通常の意味に従って解釈する限り,ヘーグ陸戦条約3条の規定は,ヘーグ陸戦規
則の遵守を実効化するため,同規則に違反した交戦国の損害賠償責任を定めたもの
であり,同規則違反によって損害を被った個人が加害国家に対して直接損害賠償請
求権を行使することまでを認めたものではないと解するのが相当である。
これは メッセージ 28167 (fukagawatohei さん)への返信です.