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パレスチナの悲鳴 (上)Ⅱ

投稿者: arisugawahiro_0 投稿日時: 2002/04/30 10:08 投稿番号: [141172 / 177456]
戦火の自治区から    東京新聞4月29日

  大人たちはイスラエル軍への反発より、長引く衝突と将来への不安から疲れ切っていた。

  ドヘイシャ診療所に来ていたニマ・オスマンさん(29)は生後一カ月の長男を大事そうに抱えていた。娘二人と息子、夫と近くに住んでいる。

  「ここから五分の場所に母たち家族が住んでいるけど、外出ができず息子を見に来たのは生まれた時だけ。あとは電話で話すしかない。十分に食べてなく母乳がうまく出ない。四歳の娘は窓際に行くと撃たれるから危ないって…。すっかりナーバスになっている。明日何が起こるか分からず、不安でしかたがない」と訴える。

  同診療所のオマル医師は「一番の問題点は、イスラエル軍の侵攻が長期にわたり、緊張と不便な生活を強いられていることだ。その影響で胃腸炎や高血圧の人が増えた。おねしょをする子どもも増えた。住民のストレスはピークだ」と心配する。

  ベツレヘムで最大規模のフセイン病院にも搬入のため立ち寄った。この地区はこの日、四日ぶりに禁足令が解かれ午後二時から四時間だけ外出が許されたこともあって、玄関前は住民たちでごった返していた。藤屋さんは「アラビア語で『殉教者』を意味する『シャヒード』という言葉を話す人がいた。はっきりは分からないが、聖誕教会から遺体や負傷者が病院に運び込まれるかもしれないと、家族を捜しに来た人たちではないか」と話す。

■「仕事がない」生活困窮も深刻

  生活の困窮化も深刻だ。同病院で昨日長女を出産したバスマさん(37)は、出産費用はとりあえず一昨年九月に始まった「インティファーダ(民衆蜂起)」以降に自治政府が始めた保険でまかなった。だが「衝突以前、イスラエル側の建築現場で働いていた夫は、もう一年半も仕事がない」と言う。

  転倒して頭にけがをした四歳の長男を連れてきた女性も夫が建築現場労働者で、今は仕事がないという。「妊娠七カ月だが、お金がなくてこの三カ月検診に行けないでいる。湿しんやむくみも出て具合はよくないが、仕方がない」と困り切った様子だ。

  「自治区には仕事がないからパレスチナ人たちは、安い賃金でもイスラエル側に行って働く。ただでさえ得られる仕事は限られ、ユダヤ人との賃金格差は大きかった。それがこの衝突で移動もできず、収入が絶たれてしまった」と藤屋さんは話す。

■足を失った恨み「神が決める」

  最後に訪問したアラブ・ソサエティー・リハビリテーションセンターはけがを負った人のリハビリ施設。そこで松葉づえをついたモハメッド・ピシャラートさん(24)に出会った。彼は元パレスチナ警察官で救急隊にいた。昨年十月、ベツレヘム中心街で、イスラエル軍に撃たれた女性を救出しようとした際、銃撃で右足を失った。

  イスラエル軍への恨みはあるか聞くと「彼らを倒そうとは思わない」と言う。理由をたずねると「それは神が決めることだ」と力を込めた。衝突の行方は混とんとしている。
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