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パレスチナの悲鳴 (上)

投稿者: arisugawahiro_0 投稿日時: 2002/04/30 10:06 投稿番号: [141171 / 177456]
  戦火の自治区から    東京新聞4月29日

「戦車に投げる」   少年   手に爆弾
  生活を軍にじゅうりんされ、子どもたちの心は確実にすさんでいく。長引く戦火、禁足令で思うに任せない医療に不安は募り、困窮は深刻化する。パレスチナ住民のストレスは頂点に達していた。医療支援活動を行う日本の非政府組織(NGO)「日本国際ボランティアセンター(JVC)」に同行して見た現地の様子を報告する。

  (鈴木   穣)

■人懐こかったのに…   『環境が子ども変えてしまった』

  「爆弾持ってるんだ。(イスラエルの)戦車が来たら投げてやる」

  武装勢力が立てこもり、イスラエル軍が包囲して緊張が続く聖誕教会が中心部にある自治区ベツレヘムの南西部、人口一万千人のドヘイシャ難民キャンプで二十六日、ある少年が、爆弾を手に持ち自慢げにこう教えてくれた。自治区ガザで二十三日、ユダヤ人入植地を襲撃しようと花火の火薬を詰めた爆弾を持っていた十三−十五歳の中学生男子がイスラエル兵に射殺された。そのニュースを聞いてこの少年は爆弾を持った。本物かどうか分からないが、イスラエル兵が見つければ命の保証はない。

  同キャンプ前の目抜き通りには焼かれたごみが散乱、焦げたにおいが充満していた。タイヤが燃やされ黒い煙が立ち上っていた。イスラエル軍への無言の抵抗のようだ。近くにはパレスチナ自治政府の建物があったが、そこだけ破壊され、がれきの山だ。

  この日はJVCと米国など二つのNGOと合同で、不足する医薬品などを四カ所の病院に運び込む作業に同行した。トラック二台、乗用車二台に分乗して自治区に入り、JVCは三千ドル分の医療器具や医薬品を提供した。その一つ同難民キャンプにあるドヘイシャ診療所にこの少年はいた。

  この無惨な光景と同様、子どもたちの心も殺伐としていた。路上には、ほかにも十代の少年たちが集まっていた。遊んでいると思った記者に、同行した米NGOスタッフでパレスチナ生まれのサマール・アブダルハディさんは「そうじゃないわ」と一言。詳しく説明してくれなかったが、子どもたちを見て分かった。

■石を持ち集まり「俺たちも死ぬ」

  手に手に拳大の石を持っている。巡回に来るイスラエル軍の戦車に投げつける気なのだ。前出の少年は「ガザの少年のように、俺(おれ)たちも死ぬんだ」と吐き捨てた。ベツレヘムの別の難民キャンプで教育活動を担当するJVCの佐藤真紀さん(40)は「あんなに人懐こい子どもたちがこんなにすさんでいたとは…」とこの少年たちを見てショックを隠せない。

  同難民キャンプで医療活動を続けた経験を持つJVCの藤屋リカさん(34)は「キャンプ内には子どもたちが遊びに来るセンターがあって、そこで絵を描いたりスポーツをしたりしていた。子どもらしく過ごせる環境があれば、そうするのに。環境が子どもたちを変えてしまった」と唇をかむ。

  街への入り口にあった軍の検問所で、この日からここの警備に配属となった息子に会いに来たユダヤ人男性は射殺されたガザの少年たちを「米テレビは無実だと報道したが、爆弾を持っていたんだ。少年かどうかは関係ない」と言う。なぜ少年がそこまで追いつめられているのかまではなかなか理解されないようだ。

■長引く禁足…「母乳も出なく」

  路上の子どもたちの一キロ先の交差点には、軍の戦車一台と装甲車二台が巡回中だった。ここは聖誕教会からも一キロの距離。エルサレムに続く幹線道路の要衝だ。記者たちの車が近づくと戦車に乗っていた兵士から制止を求められた。車内に緊張が走る。砲身の先に目をやると、そこにはパレスチナ人男性三人が食料品を家に運び込んでいた。

  何か不審な行動をしてしまったのか、約十メートルという至近距離から巨大な砲身が生身の住民に向けられている。国を持たないパレスチナ人と国を挙げて国防に取り組むイスラエルとの圧倒的な軍事力の差と立場の違いがそこにあった。
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