イスラエル/パレスチナ和平

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>トピずれ 姜尚中

投稿者: r911911911 投稿日時: 2003/07/26 17:28 投稿番号: [6279 / 20008]
アドベンさん。『ナショナリズムの克服』と『インチキな反米主義者、マヌケな親米主義者』(ジャン=フランソワ・ルヴェル)を読み終えました。ルヴェルの本は別カテでの紹介でしたが、それぞれとても面白く読めました。『現代アラブの社会思想』以来、掲示板のお陰で最近は本がそれなりに当たっているので嬉しい。有り難うございます(僕は広河隆一だけはどうしても受け入れられない、というか、納得できないけど)。


なぜか『バカの壁』(養老孟司)というのも同時並行で読んだ。養老氏が「万物流転、情報不変」と言い、森巣氏がリイマジンド・コミュニティ(再想像の共同体)という時、実は同じことを語っているように思えて、両書に不思議なつながりを感じた。なんというか、『克服』と『壁』はそれぞれの内容を補完しあって、ひとつの「可能性」を提示しているように思えた。

人間は変わり続ける。その想像の産物である国家/共同体の形も変わり続け、常に「再想像」が可能でありかつ必要だ…。こういう視点による本が書かれ、それぞれが評価を得られる時代になってきたことにも「時代」を感じた。

新しい地平、といった印象はルヴェル氏の本ではもっと強く感じされられる。これがフランスで「大ベストセラー」だというのだからあの国もまんざら捨てたものじゃない――フランス文学好きとしてはホッとさせられたところでもある。

日本の「売れ筋」と比較すればやはり相当な差だ。2003年も極東では相変わらず陰謀モノやキワモノ、「盲目的反米主義」本ばかりだ。活字のみならず全国放送の世界もスゴイ。先日うっかり「ニュースステーション」を見てしまったら、あまりの単細胞ぶりに笑わされてしまった。

「再想像の共同体」という概念は、『克服』の中で「安手のコスモポリタン」という表現で牽制されている。昔からある世界主義との区別という点では具体的には当然ながら踏み込めてはいない。これはまあ、当たり前である。そんな魔法のウルトラCがあれば、中東紛争だってとっくに「解決」できているはずだ。いや、およそ「民族」に関わる「諸問題」など、すべて「克服」できる。

そうはいっても、過去百年のあいだに、植民地主義は「人権」によって克服されて、表面上の人種差別は駆逐された(されつつある)。同じように、今後百年で、「国家」や「民族」そのものが「克服」されていく可能性というものは、あるのだろう、と強く思えるきっかけを与えてもらえた。

また、ルヴェル氏にはこういう一節があった:「テロを撲滅する唯一の手段は、軍事力ではなく、世界から貧困や不平等を一掃することだという主張は間違っている。テロリズムの動機は貧困ではないからだ。この馬鹿げた論理は、完璧な世界が実現するのを夢見て、世界が滅亡するまで待ち続けろというのと同じだ。…」

この「完璧な世界が実現するのを夢見て」というフレーズなどは、例の『現代アラブの社会思想』で池内氏が看破したイスラムの姿についての表現と相通じるものがある。それはまた、Barry Rubinが批判したパレスチナの半世紀に及ぶ精神的堕落でもある。

歴史の中で「言葉」が具体的な影響力を及ぼすまでには「ズレ」がある。ルヴェル、池内、ルービンといったまったく立場の異なる知識人たちが、現代社会の病理について「非現実性」といった視点を言語表現のうえに落とし込んできている――この見方はどうということもないように思いがちだが、実のところ、「戦後」の言論は大方において「浮き足だって」いたし、「青臭く」かつ「生きる責任と養う責任と破綻しない責任」において無力すぎた。

彼らのような言論が登場し、それが少なからず読まれ認識されるようになったのは、やはり9/11があったからなのかもしれない。いずれにせよ、これらの言語表現は、時間的な「ズレ」を経て具体的な影響を国際社会に与えていくのだろうと思う。

二十世紀的な「左翼思想」、偽善的人権を騙った平和主義、闘争のための闘争の美化、他者批判のみに陥りがちな自己矛盾の精神……こうした病理が居場所を失いつつある兆候なのだろう。現実世界における「死者たち」が淘汰されていくのであれば、喜ばしい限りだ――もちろん人が変わり続ける存在である以上、実際に「死」に至るのは「古く悪しき二十世紀」にすぎないはずではあるが。

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