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宗教多元主義の諸様相

投稿者: klekketi 投稿日時: 2003/01/17 01:22 投稿番号: [111 / 17759]
岸根   敏幸

最後にまとめとして、通約的宗教多元主義と非通約的宗教多元主義の二つに区別された宗教多元主義への展望を提示して本稿を閉じることにしたい。

  まず第1にヒックの宗教多元主義は宗教理解を一転させるようなパラダイム転換を試みた点で評価されるだろう。しかしこれまで多くの論者が指摘してきたように、本性的実在を中心とする理論構築は克服しがたい困難に直面していると言える。

  第2にカブの宗教多元主義は宗教の本質やいわゆる「宗教」を否定し、宗教の通約化を拒絶するラディカルな多元主義と言える。しかし、カブの所論を見るかぎり、他宗教理解の問題は理論的に進展せず、「対話」や「自己変革」という実践的な課題の中に解消しているような印象を受ける。ヒックを中心とした従来の宗教多元主義者たちが宗教の本質を安易に想定しているという指摘は理解されなくもないが、カブ自身の宗教本質論への批判とその代案として提示されたコンテキストに依存する曖昧な宗教概念の提唱もその妥当性が再検討されな
ければならない。

  第3に宗教多元主義は現在もなお進行中の思潮であって、その思想的な評価は宗教多元主義の全容の把握と、宗教多元主義を批判する論者との論争をトレースした上で行うべきであり、従来の研究にしばしば見られるような断片的な知見でその特色および問題点を指摘することには多くの危険を伴う。しかし宗教多元主義の提起する問題が宗教研究においてこれまで事実上不問にしてきた宗教の同質性という問題に主体的な観点からアプローチを試みていると素描することは許されるであろう。
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