盧溝橋事件26 軍使会見室に入る
投稿者: kireigotowadame 投稿日時: 2010/07/21 18:30 投稿番号: [513 / 2250]
寺平忠輔著 『日本の悲劇
盧溝橋事件』 読売新聞社刊
119〜121p
《 車は県政府の正門前に横付けにされた。
桜井顧問や周永業、それに一足先に着いた林耕宇達は、
すでに県政府客庁に集って、中国軍の常長と話し合いを始めていた。
ここの中国軍の指揮官は金振中といって三十七八歳、色の浅黒い苦味走った、
精悍 (せいかん) な男だった。これが事件発端における、中国側当面の責任者だった。
桜井顧問は八仙卓をたたいて
「最初、日本軍に対して射撃をしかけたのは
お前の部隊に違いない」
と金振中に詰め寄っていた。
「イヤ、私の部下が城内から射撃したなんて、そんな事は絶対ありません」
営長はこれまたハッキリ、事態の釈明につとめていた。
「いや、射って来たのは城外からだ。
城外の堤防のところにお前の部下が確かにいたはずだ」
「イヤ、絶対におりません」
「兵隊のいないところからどうして弾がとんで来るかッ!
これ以上見えすいた弁解なんかもうやめてくれ」
顧問は怒り心頭に発し、半ば立ち上らんばかりにして相手を睨みつけ、
激しくテーブルを打ちたたいた。金営長も負けてはいない。
くちびるを震わせ、物凄い形相で桜井顧問を睨み返し、両名対坐、
侃々諤々 (かんかんがくがく) の論争がここに展開されていたのである。
そこにちょうど私が入って来たわけである。桜井顧問はいままで坐っていた
正面のソファーを私に譲ると、自分は私の左側のイスに席を移した。
顧問と並んで王冷斉県長が席を占める。
それと向い合って林耕宇と周永業とが腰を下した。
私は、この場の空気を一応緩和させる事が必要である、と感じた。
そこで落ち着いて、ゆっくり金営長に話しかけた。
「私は、本日、軍使として、現地交渉のためこちらに派遣されて来た、
北京特務機関の寺平大尉です」
すると金振中、傍の副官に命じて自分の名刺を持って来させ
「私はこの宛平県城に駐屯している、中国軍の営長金振中です。どうぞよろしく」
そういって細長い名刺を差し出した。
その表書には
陸軍第二十九軍
第三十七師
第一百一十旅
歩兵第二百一十九団
第三営
少校営長
陸軍歩兵少校
金
振
中
そして横の方に小さく、靄如
河南固始と記されてあった。》
つづく
これは メッセージ 512 (kireigotowadame さん)への返信です.
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